- 今後12カ月の評価意向は非Nvidiaが39.4%で、Nvidia次世代GPUの25.3%を14ポイント上回る
- 本番採用ではAzureが29%→47.1%へ、Geminiは41.1%→47.6%へ拡大
- 3カ月以内のプラットフォーム変更予定は38.3%→28.8%に低下し運用重視へ
評価意向で非Nvidiaが先行
VentureBeatは、AIインフラの構築や運用に関わる170人を対象に「VB Pulse」調査を実施しました。調査時期は2026年7月です。今後12カ月以内に評価するアクセラレータを尋ねたところ、AWS Trainium、Google TPU、AMD Instinct、Intel Gaudi、自社開発のASIC(特定用途向け半導体)のいずれかを挙げた回答は39.4%に達しました。
Nvidiaの次世代GPUであるBlackwell GB300などを挙げた回答は25.3%にとどまりました。両者の差は14ポイントです。次世代GPUへの移行を判断する前に、まずは他の選択肢を試そうという企業が多いことがうかがえます。
Nvidia以外も選択肢に
この結果は、AIアクセラレータの評価段階で複数の選択肢が並び始めたことを示します。本番環境ではNvidiaが依然として標準ですが、企業は評価リストを作るときにNvidia以外も載せるようになっています。クラウド事業者が提供するTrainiumやTPUが、その代表例です。
ただし、評価対象が広がったからといって、直ちにNvidiaからの乗り換えが進むわけではありません。この調査結果は「本番環境の標準はNvidiaのまま、選択肢を持つ企業が増えた」と解釈するのが妥当です。今回の評価意向が実際の調達にどれだけ結びつくかは、今後のデータを待つ必要があります。
本番採用はAzureとGemini拡大
本番環境への採用も拡大しています。Microsoft Azureを本番で使っていると答えた割合は、6月の29%から7月の47.1%へと18.1ポイント伸びました。GoogleのGeminiは41.1%から47.6%に増え、調査対象のなかで最も広く使われています。OpenAIは40.2%から49.4%、Anthropicは12.1%から24.7%に増えています。
Azureの急増については、調査対象の変化を割り引く必要があります。7月の回答者は従業員1,000人以上の企業が57%を占め、6月の37%から増えました。Azureはどちらの月でも企業規模が大きいほど採用率が高い傾向がありました。したがって、増加分の一部は回答者の構成による影響とみられます。
プラットフォーム変更は先送り
プラットフォーム変更の時期は、むしろ先延ばしの傾向にあります。3カ月以内に変更を予定する割合は、6月の38.3%から7月には28.8%へと9.5ポイント下がりました。3〜6カ月先を予定する割合は4.1ポイント、6〜12カ月先は5.3ポイントそれぞれ増えています。
自社でGPUを運用する企業の稼働率にも改善が見られます。稼働率が50%以下の企業は6月の83%から7月は69%に減り、50%を超えて利用している企業は13%から23%に増えました。重視する指標として、稼働時間と信頼性を挙げる割合は42.1%から51.2%に増えています。企業は新しいチップへの乗り換えより、現有設備の運用効率と安定性を高めることを優先しているとみられます。
調査から読み取れる限界
この調査で分かるのは、あくまで「評価意向」であり、非Nvidia製品の購入や本番導入の実績ではありません。評価した結果、従来のNvidia環境を維持する企業も多いと考えられます。また、どの製品を具体的に比較したのか、採用を決めた理由は今回の公表分に含まれていません。
回答者数は170人と限られており、対象地域も明記されていません。したがって、この数値を業界全体の傾向として一般化するには注意が必要です。現時点では、多数の企業が「Nvidia以外を試してみよう」と考えていることだけを確認できた、とするのが正確な読み方です。
| 項目 | 非Nvidia製 | Nvidia次世代GPU |
|---|---|---|
| 評価意向の割合 | 39.4% | 25.3% |
| 製品例 | AWS Trainium、Google TPU、AMD Instinct、Intel Gaudi、自社ASIC | Blackwell GB300など |
Nvidia remains the default in most production environments. But organizations are building real optionality into their accelerator strategy rather than treating Nvidia as the only evaluation worth doing.
Nvidiaはほとんどの本番環境で依然として標準である。しかし組織は、Nvidiaを唯一の評価対象とするのではなく、アクセラレータ戦略に実際の選択の余地を組み込もうとしている。
今後の見通し
今回の調査は評価意向の段階であり、今後12カ月の間に実際にどれだけ非Nvidia製の採用が進むかが焦点になります。Nvidia側が次世代GPUの供給を増やし、価格や性能を維持できれば、評価リストの存在がそのまま乗り換えにつながるとは限りません。一方、AWS TrainiumやGoogle TPUなどクラウドベースの選択肢が拡大すれば、Nvidiaのシェアに影響する可能性も考えられます。次回のVB Pulse調査で、本番採用の割合と評価意向の差がどう変化するかを確認すれば、この動きが一時的な関心なのか構造的な変化なのかを判断できる材料になるでしょう。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
日本のIT企業・開発者にとって、AIアクセラレータの評価対象がNvidia一辺倒ではなくなってきた点は、クラウド選定やインフラ調達の前提に関わります。AWSで利用できるTrainium、Google CloudのTPU、AMD Instinctなどが候補に入っていれば、GPUの需給逼迫や特定ベンダーへの依存を分散する余地が出てきます。評価基準についても、性能だけでなく稼働時間や信頼性といった運用指標を重視する傾向は、日本でも同様に意識すべき変化です。この調査を踏まえるなら、自社でも12カ月程度のスパンで複数チップを試す評価プロセスを持っておくことが、次の調達判断を誤らないための実務的な対策になります。
気になる点
- この調査の対象者はどのような企業か。
- VentureBeatが2026年7月に実施した「VB Pulse」調査で、AIインフラの構築・運用に関わる170人が回答しました。7月の回答者の57%は従業員1,000人以上の企業に属しており、6月の37%から大企業の比率が高まっています。対象地域や業種の内訳は公表文には明記されていません。
- Azureの採用率は本当に伸びているのか。
- 調査では本番採用の割合が29%から47.1%に増えていますが、同時に回答者が大企業に偏る構成変化が起きています。Azureは企業規模が大きいほど採用率が高い傾向があるため、増加分のすべてを市場トレンドとみなすのは早いと言えます。
- 日本の企業はこの結果をどう読めばよいか。
- 原文には調査対象地域の記載がなく、主に米国の動向を反映した可能性が高いです。日本ではクラウドベンダーの提供状況や料金体系が異なるため、評価リストの傾向がそのまま当てはまるとは限りません。自社のワークロードで各アクセラレータが使える環境を確認するのが先決です。
用語解説
- AIアクセラレータ
- AIの学習や推論を高速化する専用半導体。GPUやTPUなどが該当する。
- ASIC
- 特定の用途に特化した半導体。本記事ではAI処理用に自社開発されたチップを指す。
- Blackwell
- Nvidiaの次世代GPUアーキテクチャのコード名。GB300などの製品が含まれる。
- 本番環境
- 開発や検証ではなく、実際の業務や顧客向けサービスを動かす環境のこと。
出典
Enterprises put non-Nvidia chips 14 points ahead of Nvidia's next-gen GPUs on their evaluation lists
AI導入も顧問も、お任せください
何から手をつけるか、どこまでAIに任せるか。自社の業務に合わせて整理し、導入から運用まで伴走します。相談だけでも構いません。
AI導入について相談する