
- グーグル、6月のChrome最新版で1,072件の脆弱性を修正
- 過去2年分(1,036件)を上回る急増、AIツールが要因
- マイクロソフトも過去最多570件、アップルは横ばい
発表内容
グーグルは2026年7月30日、自社のAIツールを活用したChromeのセキュリティ強化に関するホワイトペーパーを公開した。それによると、6月にリリースした最新の2バージョン(Chrome 149と150)で、計1,072件の脆弱性を修正したという。これは過去2年間に修正した1,036件を上回る数値で、同社はこの結果をAIの活用によるものだと説明している。
ホワイトペーパーでは、脆弱性の発見件数が指数関数的に増加していることを示すグラフも公表された。グーグルは各バージョンを「マイルストーン」と呼んでおり、AIの適用によってセキュリティ修正のペースが劇的に変わったことを強調している。今回の数字は、ある1カ月の修正件数が過去2年分の累計を超えたという点でも注目される。
AIによる新たな修正体制
これまで脆弱性の修正は、外部から報告された問題を人手で解析するのが一般的だった。グーグルはLLM(大規模言語モデル)をコード解析に応用し、潜在的な不具合を自動的に検出する体制を整えたとみられる。Chromeのエンジニアリング担当ディレクター、ダグ・ターナー氏は「Geminiのようなモデルを適用することで、先制的に脆弱性を修正できる」と述べている。
AIによって発見工程が自動化されると、修正にかかる人的コストは大幅に下がる可能性がある。一方で、発見される脆弱性の量が増えれば、その優先順位を判断する新たなプロセスも必要になると考えられる。そのため、AIの導入は修正数の増加だけでなく、開発プロセス全体の見直しにつながる可能性がある。
業界全体の動き
グーグルだけでなく、マイクロソフトもAIの活用によって修正数が急増している。同社は2026年7月の定例更新(パッチチューズデー)で、自社製品の脆弱性を過去最多の570件修正したと発表。AIを理由に挙げている。
一方、アップルの2026年の修正数は482件で、前年とほぼ同水準にとどまっている。この差はAI活用の度合いによるものと推測されるが、アップルは公式なコメントを出していない。各社の戦略がセキュリティ修正の数値に表れ始めたと言える。
課題と今後
AIによる脆弱性発見が急速に進む一方で、企業側には新たな課題も生まれる。修正すべき項目が増えると、パッチ適用のタイミングやリソース配分の判断が難しい。また、AIが発見した問題が本当に悪用可能かどうかを検証する人手も必要だ。
今回の発表は、AIがセキュリティの現場で実際に成果を出し始めたことを示す一例と言える。今後はAIの精度向上とともに、自動修正の範囲が広がる可能性がある。日本企業も同様の技術を自社の開発プロセスに取り入れるかどうか、検討が求められそうだ。
By applying models like Gemini, we are preemptively fixing vulnerabilities, outpacing our adversaries and making Chrome safer with every update,
「Geminiのようなモデルを適用することで、私たちは先制的に脆弱性を修正し、敵対者をしのぎ、毎回のアップデートでChromeをより安全にしています。」
日本の開発者・IT企業にとっての意味
日本のIT企業にとって、セキュリティ対策の在り方を見直すきっかけになるだろう。従来は脆弱性情報の収集やパッチ適用を人手に頼る企業も多いが、AIによって発見される脆弱性の数が増えれば、対応コストはさらに膨らむ可能性がある。一方で、自社製品の品質向上やエンジニアの負担軽減のために、AIを導入する選択肢も現実味を帯びてきた。グーグルやマイクロソフトの事例は、AIが単なる開発支援ツールではなく、セキュリティ運用の中心になり得ることを示している。日本企業もAIを活用した自動化の是非を、対岸の火事としてではなく、自社のリスク評価に組み込むことが重要だ。
用語解説
- LLM
- 大規模言語モデル。大量の文章データから学習したAIで、コード解析などにも応用される。
- 脆弱性
- ソフトウェアのセキュリティ上の欠陥。攻撃者が悪用するとデータ漏えいや乗っ取りなどが起こりうる。
- パッチチューズデー
- 米マイクロソフトが毎月定例で行うセキュリティ更新の通称。
出典
Google says it fixed more Chrome bugs in June than over the past two years, thanks to AI
企業のAI活用顧問を、いまなら無料で承っています
何から手をつけるか、どこまでAIに任せるか。自社の業務に合わせて一緒に整理します。導入前の相談だけでも構いません。
無料でAI活用の相談をする