
- アリババのダモアカデミーが医療AI「Damo Radar」をオープンソース化
- 造影CTで18臓器・約150の疾患を検出、悪性腫瘍も対象に含む
- 約4万件でAUC平均0.913、Science掲載論文で放射線科医を上回る
発表された内容
アリババグループ・ホールディングスの研究部門であるダモアカデミーが、腹部CT画像を読んで約150の疾患を特定できるAIモデルをオープンソースとして公開した。対象には悪性腫瘍などのがんも含まれる。モデル名は「Damo Radar」で、同研究所が金曜日に発表したものと報じられている。同社が進めてきた医療AIへの取り組みの最新の一歩と位置づけられている。
解析対象は、18の腹部臓器を含む造影CT画像とされる。悪性腫瘍に限らず、幅広い疾患やその他の異常を検出することを目的に設計されたという。特定の臓器や単一の疾患に絞らず、腹部全体をまとめて扱う点が特徴である。
技術的な特徴
Damo Radarは、画像と言葉の両方を扱う「視覚言語モデル」と呼ばれる種類のAIである。CT画像と臨床レポートを対にして学習させたとされており、画像の所見を言語情報と結びつけて理解する仕組みとみられる。
研究チームは、この学習手法を他の種類の医療画像にも拡張できる可能性があるとしている。あわせて、このモデルを「世界初のエキスパートレベルの汎用医療画像モデル」と表現している。ただし、どの程度の規模のモデルなのか、推論にどれほどの計算資源が必要なのかは原文では触れられていない。
性能と評価
約4万件の実臨床検査で評価され、146の臨床所見に対してAUCの平均0.913を達成したと報告されている。AUCは診断精度を表す指標で、1.0が完全な診断精度を示す。0.913という値は、単純な当て推量より大幅に高い水準といえる。
Scienceに掲載された新しい研究によれば、このモデルはほとんどの放射線科医を上回ったとされる。ただし、読影医との比較がどのような症例構成・評価方法で行われたのかは、原文では詳しく説明されていない。
分かっていないこと
モデルのライセンス条件、配布場所、日本語を含む多言語への対応状況は原文では明らかにされていない。モデルのパラメータ数や学習データの詳細、推論に必要なハードウェア要件も示されていない。
また、医療機関での実際の診断利用には、各国の規制に基づく承認や検証が別途必要になるとみられる。この点について原文は言及していない。研究チームの「他の画像への拡張可能性」という発言も、現時点では見通しの表明にとどまる。
The research team said the training method could eventually be extended to other types of medical imaging, calling the model "the world's first expert-level generalist medical imaging model".
研究チームは、この学習手法が最終的に他の種類の医療画像にも拡張できる可能性があると述べ、このモデルを「世界初のエキスパートレベルの汎用医療画像モデル」と呼んだ。
今後の見通し
研究チームは学習手法を他の医療画像分野に広げられる可能性に言及しており、今後はX線やMRIなどへの応用が研究テーマになるとみられる。判断材料として注目したいのは、公開されたモデルのライセンス条件、推論に必要な計算資源、そして日本の施設データでの再現性の3点である。特に、AUC 0.913という数値がどのような症例構成で得られたのか、また放射線科医との比較がどのような評価方法で行われたのかが論文で明らかになれば、実運用に近い評価ができる。臨床導入には別途の規制対応が必要になるとみられ、その時期は現時点では不明である。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
CT画像の読影は放射線科医の負担が大きく、日本でも医師の地域偏在や読影の待ち時間が課題とされてきた。腹部という広い範囲を対象に、約150の所見を1つのモデルで扱う設計は、疾患や臓器ごとに個別のAIを導入してきた従来の流れとは性格が異なる。オープンソースで公開されれば、医療機器メーカーや研究機関が自前で検証や追加学習を行い、日本語の臨床レポートや国内の撮影条件に合わせた調整を進められる可能性がある。ただし公開されている情報は論文と発表に限られ、薬事承認や診療報酬上の扱い、実運用での責任分界は示されていない。まずはライセンスと入手先を確認し、自施設のデータでの追試から始めるのが現実的とみられる。
気になる点
- この AI モデルは日本でも使えますか
- オープンソースとして公開されたと報じられているため、技術的には入手・検証が可能と考えられます。ただし記事ではライセンス条件や配布先、対応言語が明らかにされていません。日本国内で臨床利用するには、別途の承認や国内データでの検証が必要になるとみられます。
- 診断精度はどの程度ですか
- 約4万件の実臨床検査で、146の臨床所見に対するAUCの平均が0.913だったと報告されています。AUCは1.0に近いほど診断精度が高いことを示す指標です。Scienceに掲載された研究では、ほとんどの放射線科医を上回ったとされています。
- CT以外の画像にも使えますか
- 現時点では造影CTの腹部画像を対象とした設計です。研究チームは学習手法を他の医療画像分野へ拡張できる可能性に言及していると報じられていますが、具体的な対応範囲や時期は明らかにされていません。
用語解説
- AUC
- 診断精度を表す評価指標。ROC曲線の下側の面積で表され、1.0が完全な診断、0.5はランダムな予測と同程度を意味する。
- 視覚言語モデル
- 画像と言葉(テキスト)の両方を扱えるAIモデル。画像の内容をテキスト情報と結びつけて理解・生成する。
- 造影CT
- 造影剤を投与して撮影するCT検査。血管や臓器の状態をより鮮明に描出でき、腫瘍の評価などに用いられる。
- 汎用医療画像モデル
- 特定の疾患や臓器に限定せず、幅広い所見や部位に対応しようとする医療画像AIモデルを指す。
出典
Alibaba open-sources AI model that can detect cancer and nearly 150 conditions
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