- クラウドやGPUなしでRaspberry Piでも動作するオープンウェイトのエージェント向けモデル
- 2.6Bパラメータ・12.8万トークン対応、ツール呼び出しや文書管理などに特化
- 性能値はベンダー報告の未検証データ、カスタムライセンスの確認も必要
何が発表されたか
AIスタートアップのLiquid AIは2026年8月6日、エージェント型AI向けの新しいオープンウェイト言語モデル「LFM2.5-2.6B」を発表しました。同社はMIT出身のコンピューター科学者らが2023年に設立した企業です。このモデルはクラウド推論やGPUに依存せず、スマートフォンやノートPC、さらにはRaspberry Piのような小型デバイス上で完全にローカルに動作することを特徴としています。
同社は、規制の厳しい業界や、機密情報をクラウドに送信したくない企業にとって、エッジAIの選択肢を提供する狙いがあると説明しています。特に、ツール呼び出し、文書管理、カレンダーやワークフローの自動化、常時稼働するバックグラウンド処理など、大量で明確に定義されたエージェントタスクに適しているとしています。車両やロボティクスのような通信環境が限られた現場での利用も想定されています。
技術的特徴と対応環境
LFM2.5-2.6Bは26億パラメータのモデルで、12万8000トークンのコンテキストウィンドウとネイティブなツール呼び出し機能を持ちます。モデル名の「2.5」は世代、「2.6B」はパラメータ数を示します。ポストトレーニング済みモデルに加えて、開発者がファインチューニングできるベースチェックポイント「LFM2.5-2.6B-Base」もHugging Faceで公開されました。
推論スタックについては、llama.cpp、MLX、vLLM、SGLang、ONNXなどの主要なフレームワークに初日から対応しています。同社はオープンソースのファインチューニングフレームワーク「LEAP」も提供し、開発者が独自のタスク向けに調整しやすくしています。対応範囲はコンシューマー向けハードウェアからエンタープライズ基盤、組み込みシステムまでを視野に入れています。
性能とモデルの位置づけ
同社の報告によれば、テキスト生成速度(デコードスループット)はApple M5 Maxで毎秒約220トークン、AMD Ryzen AI Max+ 395で毎秒113トークン、スマートフォンで毎秒約30トークンを達成し、メモリ使用量は2.5GB未満とされています。一方、Nvidia H100 GPU1枚では持続的な同時負荷の下で毎秒約15,000出力トークン、1日あたり約13億トークンを処理できるとされます。ただし、これらの数値はベンダーによるベンチマークであり、第三者による検証はまだ行われていません。
Liquid AIはLFM2.5-2.6Bを最大級のフロンティアモデルと競合させるのではなく、遅延やプライバシー、展開の柔軟性、推論コストが絶対的なベンチマークの優位性よりも重要となる用途に焦点を当てています。同社のポストトレーニング責任者であるMaxime Labonne氏は、クラウド上の最良のモデルと共存し、クラウドモデルを使えない場合にエッジAIを選ぶべきだと説明しています。コーディング中心の作業はより大きなモデルに任せた方が良く、適用範囲は特定のエージェントタスクに限定される見込みです。
ライセンスと未検証の課題
LFM2.5-2.6Bはカスタムのオープンウェイトライセンスの下で提供されるため、企業の法務部門は利用条件を慎重に確認する必要があります。同様のアプローチは、先月公開されたMoonshotのフロンティアモデル「Kimi K3」でも採用されており、オープンウェイトモデルのライセンス解釈を巡る議論が続いています。原記事も、ライセンス条項を詳しく調べるよう企業の法務部門に注意を促しています。
また、性能値は同社の自己報告に基づいており、実環境での再現性は今後の検証課題です。特にCPUや端末ごとの実測値は環境によって変わるため、導入前に自社のハードウェアで評価することが推奨されます。Liquid AIはモバイルアプリ「Apollo」を通じてスマートフォン上でも試用できるとしていますが、提供範囲や利用条件は別途確認が必要です。
We want to make models for another type of user, and the best way of describing it is: you should use [edge AI] when you can't use a cloud model.
私たちは別のタイプのユーザーのためのモデルを作りたいと考えています。最も適切な表現は、クラウドモデルを使えない場合にエッジAIを使うべきだ、ということです。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
日本のIT企業にとって、LFM2.5-2.6Bはクラウド依存を避けたい案件での選択肢になります。金融や医療、官公庁など機密性の高いデータを扱うシステムでは、オンプレミスや端末内での推論が求められることがあり、GPU不要で動作する本モデルは導入コストを抑えられる可能性があります。また、工場や車両、ロボティクスなど通信が不安定な現場でのエージェント稼働も想定され、製造業の多い日本企業にとって応用範囲は広いとみられます。一方で、性能値が未検証である点やカスタムライセンスの制約を踏まえ、導入前に自社環境での評価と法務チェックを行うことが実務上のポイントになります。既存のクラウドモデルと併用し、使い分ける戦略が現実的だと言えます。
用語解説
- エージェントAI
- ユーザーの代わりにツールを呼び出したり、複数のタスクを自動で実行するAIシステム。
- オープンウェイト
- モデルのパラメータ(重み)が公開され、利用者が自由に入手して実行・改変できる形態。
- エッジAI
- クラウドを介さず、デバイスやローカルサーバー上で推論を行うAIの利用形態。
- コンテキストウィンドウ
- モデルが一度に処理できる入力テキストの長さの上限。トークン数で表す。
- ファインチューニング
- 公開済みモデルに追加データを学習させ、特定の用途向けに性能を調整すること。
出典
No cloud, no GPUs, no problem: Liquid AI's new model LFM2.5-2.6B brings powerful AI agents to devices as small as a Raspberry Pi
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