
- OpenAIがGPT-5.6 Lunaを80%値下げ、AnthropicはOpus 5を半額投入
- 中国勢のオープンモデルが価格圧力、DoorDashなどが採用
- トークン価格は単純比較できず、エフォート設定にも注意
値下げの具体策
OpenAIは、最速かつ最も手頃なモデルとされる「GPT-5.6 Luna」の価格を80%引き下げたと発表しました。具体的には、入力トークンが100万件あたり1ドルから0.20ドルへ、出力トークンは6ドルから1.20ドルへ低下しています。
一方Anthropicは、最上位モデル「Fable 5」の半額となる「Claude Opus 5」を投入しました。価格は入力100万トークンあたり5ドル、出力25ドルです。さらに、9月から予定していた「Sonnet 5」の値上げも撤回しています。
中国勢の台頭とコスト圧力
値下げの背景には、中国のAI開発企業であるMoonshotやDeepSeekの台頭があります。彼らのオープンモデルは自由にダウンロードして調整でき、性能差も縮まっています。企業は高騰するAI請求書を抑えるため、こうした安価な代替品を検討し始めています。
実際、DoorDashやAirbnbは中国製モデルの利用を始めたと報じられています。また、OpenAIとAnthropicはエンタープライズ契約を定額制から従量課金制へ移行しており、利用量に応じたコストが企業の負担となっています。
価格比較の落とし穴
トークン価格は単純に比較できるものではありません。高性能なモデルは少ないトークンでタスクを完了できるため、一見高く見えても実際のコストが低い場合があります。また、多くのモデルは計算リソースを調整する「エフォート設定」を持ち、性能とコストが変わります。
人工知能のベンチマークを行うArtificial Analysisによれば、AnthropicのOpus 5を「中」エフォートで使うと、MoonshotのKimi K3を「最大」で使った場合と性能・タスクあたりコストがほぼ同等です。OpenAIのGPT-5.6 Lunaを「最大」で使うとDeepSeekのV4 Flashと同等の性能ですが、タスクあたりコストは2倍弱かかります。
現時点の見通しと注意点
ヘッドラインとなるトークン価格の低下は、最上位モデルには及んでいません。ウェブホスティング企業HostingerのAI技術リードであるMantas Lukauskas氏は、最高性能モデルの価格は「横ばいから上昇」と指摘します。今回の価格変更は、中位モデルの切り下げであり、最上位を守る動きだと捉えています。
OpenAIとAnthropicはコメントを拒否しました。Anthropicに近い人物は、Opus 5の価格設定は「モデルファミリーの設計によるもので、競合とは関係ない」と述べています。しかし、投資家は両社のIPOに際して巨額のAI投資が回収できるか注目しており、価格競争の行方は今後の経営に影響を与えるとみられます。
The US labs have cut the middle and are defending the top.
「米国ラボは中間を切り下げ、頂点を守っている」
日本の開発者・IT企業にとっての意味
日本のIT企業にとって、AIモデル価格の低下は利用コスト削減の機会です。一方で、従量課金制への移行により使えば使うほど費用が膨らむため、モデル選定と利用設計が重要になります。中国製オープンモデルは選択肢を広げますが、性能差やサポート体制の検討も必要です。今後の価格競争の行方は、国内企業のAI導入戦略に大きな影響を与えるでしょう。
用語解説
- トークン
- AIモデルが処理するデータの単位。入力と出力で課金される。
- 従量課金制
- 利用した計算リソースに応じて支払う方式。定額制と対照的。
- オープンモデル
- 無償でダウンロード・改変可能なAIモデル。中国勢に多い。
- エフォート設定
- モデルが推論に使う計算量を調整する設定。性能とコストに影響する。
出典
OpenAI and Anthropic in price war as Chinese AI rivals gain ground
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