
- NVIDIAはNemotronで学習コードとデータを公開し、オープンソースAIを支援
- オープンソースAIの未来は「成功」と「長尾市場への分岐」の2シナリオ
- MetaのMuse Spark 1.2公開がAnthropicやOpenAIの収益を圧迫する可能性
NVIDIAの戦略
NVIDIAは、自社のNemotronモデル向けに、法律上公開できるデータとトレーニングコードをすべて公開しています。同社はこの取り組みに約260億ドルを投じており、誰もが独自のモデルを学習できる「トークン製造機」を増やそうとしています。目的の一つは、AIの知能が一部企業に独占されない世界を作ることです。この戦略は、AnthropicやOpenAIからモデルを購入するのではなく、自前でモデルを育てることを促す動きとみられます。
その結果、多くの企業が推論処理を必要とするようになり、NVIDIAのチップ需要が拡大するとみられます。記事では、オープンソースのエコシステムが今後NVIDIAの資金に依存する可能性が高いと指摘しています。また、オープンモデル開発者が収益分配型ライセンスを試すなど、持続可能性を探る動きも始まっています。
オープンソースの「レシピ」
記事では、オープンソース言語モデルとオープンウエイトモデルを区別しています。前者はトレーニングの完全なレシピ、データ、コードを伴い、後者はモデル重みと推論コードだけを持つソフトウェアに近いものです。NVIDIAが公開しているのは前者に近く、企業はそれを改変して新しいモデルを生成できます。オープンソースのレシピは資源を大量に消費しますが、どの企業でも利用して「実行」し、新しいモデル重みを作り出せるのが特徴です。
また、トレーニングの工程も変化しています。従来は「事前学習」「中間学習」「事後学習」とされてきましたが、近年は「事前学習」「推論学習」「事後学習」という区分に変わりつつあります。汎用的なエージェント型推論モデルを基本モデルから学習させるのは難しくなっているためです。この変化は、オープンモデル開発者が基盤モデルを公開する数を減らす方向にも影響しているとみられます。
二つの未来シナリオ
今後の展開としては、二つのシナリオが考えられます。第一に、オープンソースのレシピが機能する場合です。NVIDIAはモデル構築にかかるコスト以上のチップ需要を創出できる可能性があります。ただし、Databricksや01.aiのように学習から撤退する企業も出ており、楽観はできません。
第二に、経済的に成功しない場合です。オープンモデルは効率性や特化、変更のしやすさに焦点を当てた「長尾市場」向けの存在に分岐するでしょう。たとえば、オンプレミスで動くエンタープライズ向け特化エージェントなどです。記事では、このシナリオの方が可能性が高いと述べています。
NVIDIAとMetaの違い
Metaも強力なモデルをオープンウエイトで公開する戦略を取っています。たとえばMuse Spark 1.2を公開すれば、AnthropicやOpenAIの収益成長率に打撃を与えるとみられます。Metaはトークンを戦略的に大量供給して競合を圧迫しようとしているのです。これは、NVIDIAとは異なる「間接的な収益化」の方法です。
一方、NVIDIAはエコシステム全体を自立的にしたいと考えています。オープンモデルの開発者が収益を得られるように、収益分配型ライセンスの実験も行われています。これらの試みが成功するかどうかが、NVIDIAの需要創出戦略の成否を左右するでしょう。今後数年のうちに、オープンソースAIの経済的持続可能性が明らかになるとみられます。
| 項目 | NVIDIA | Meta |
|---|---|---|
| アプローチ | 学習データとコードを公開 | モデル重みを公開 |
| 狙い | 誰もがモデルを構築し推論需要を創出 | トークンを大量供給し競合の収益を圧迫 |
| モデル例 | Nemotron | Muse Spark 1.2 |
| 投資規模 | 約260億ドル | 非公開 |
Nvidia wants a world where countless people can build token machines, so intelligence is not monopolized.
NVIDIAは、無数の人々がトークンを作る機械を構築できる世界を望んでいます。そうすれば知能が独占されることはありません。
今後の見通し
今後の焦点は、NVIDIAの投資が実際にチップ需要の拡大につながるかです。オープンソースのレシピで競争力のあるモデルを作れるか、また収益分配型ライセンスなどで開発者が持続的に資金を得られるかが鍵となります。Metaのオープンウエイト公開が競合APIの価格や収益に与える影響も注目されます。これらの動向が明らかになれば、オープンソースAIが主流になるのか、それとも長尾市場に留まるのかを判断できるでしょう。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
日本のIT企業にとって、NVIDIAのオープンソースAI戦略は、基盤モデルの選択肢を広げる可能性があります。Nemotronのレシピを利用すれば、自社データでモデルを再学習し、特定の業務に特化したAIを開発できるかもしれません。また、Metaのオープンウエイト公開が進めば、外部APIに依存せずに強力なモデルを手元で動かす選択肢も増えます。その一方で、モデル学習の資本集約度が高いため、実際に活用できるのは一部の大企業に限られる可能性も否めません。オープンソースの動向を注視しつつ、自社のAI戦略を柔軟に設計する必要があるでしょう。
気になる点
- Nemotronのデータやコードは日本企業も利用できるのか?
- 記事によると、NVIDIAは法律上公開できるNemotronのデータとトレーニングコードを公開しています。ただし、具体的な利用条件やライセンスは言及されていないため、実際の利用にはNVIDIAの公式情報を確認する必要があります。
- オープンソースモデルの学習にはどれくらいのコストがかかるのか?
- 記事ではNVIDIAの総投資額として約260億ドルが報告されていますが、1つのモデルを学習する具体的な費用は示されていません。一般的に、最強クラスのモデル構築には非常に大きな資本コストがかかると述べられています。
- MetaのMuse Spark 1.2は誰でも使えるのか?
- 記事では「オープンウエイトで公開する」とされています。オープンウエイトモデルは通常、ライセンスに従って誰でもダウンロードして利用できますが、商用利用の制限など詳細は記事に記載されていません。
用語解説
- Nemotron
- NVIDIAが開発するオープンソースに近い言語モデルのシリーズ。学習データとコードが公開されている。
- オープンウエイトモデル
- モデルの重みと推論コードだけが公開されたモデル。学習データやコードは公開されない。
- 推論
- 学習済みモデルを使って入力データに対する出力を生成する処理。チップ需要の主要因。
- トークン
- テキストを分割した単位。AIモデルはトークン単位で処理する。
出典
Teaching Everyone to Fish for Tokens
https://interconnects.ai/p/teaching-everyone-to-fish-for-tokens
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