
- AI機能の利用は全職能で6カ月間に倍増、プロダクト職は12%から34%に
- プルリクエスト数は2年で111%増、エージェント接続チームは約3倍に
- 既存作業の時間は変わらず、AI作業が上乗せされ総作業時間は増加
発表の概要
Linearは2026年8月18日、ソフトウェア開発チーム向けのデータ分析レポート「AI usage patterns in software teams」を公開した。Linearは日々数万チームが利用するプロジェクト管理ツールで、この調査はその有料ワークスペースの利用状況を集計したものである。
対象は2025年6月から2026年6月までの期間で、AI会話、エージェントセッション、課題活動、コメント、プルリクエストなどのデータが含まれる。Linear社は「市場全体ではなく、自社の顧客基盤における導入状況を示すもの」としている。
採用は全職能に拡大
2026年1月から6月にかけて、AI機能にアクティブなユーザーの割合は全職能で倍以上に増えた。プロダクト職は12%から34%、コードベースから最も遠いとされる営業・マーケティング職でも5%から18%に上昇している。
役職別では、従業員数201人以上の企業のCEOの利用率が9%から36%に急増しており、全区分の中で最大の伸びとなった。企業規模別ではどの規模でもほぼ3倍に増えており、規模による差はほとんど見られない。
ワークフローは変化した
課題の作成、トリアージ、コメントにかかる時間はほぼすべての職能で増加した。エンジニアリング職では作成とトリアージに費やす時間が約17%増え、ファウンダーは作成に17分、コメントに26分の増加が見られた。
一方、顧客リクエストやドキュメント、プロジェクトの計画に費やす時間はほぼ横ばいで、AIは「何を作るか」の意思決定よりも「どう実行するか」の部分に影響を与えているとみられる。また、AIとのチャットやエージェントへの委任といった新しい作業カテゴリが出現しており、他の作業時間を減らすことなく上乗せされている。
エージェントとPR増
2年前はAIが作成した課題は1000件に1件未満だったが、現在はLinear内で作成される課題の約半数をAIが占めるようになった。プルリクエスト数は2024年6月を基準に111%増加しており、特にコーディングエージェントを接続したチームは週間PR数が21から65へ約3倍に増えた。
非エンジニアのコード貢献も増えており、プロダクトマネージャーがPRを添付する割合は3%から10%、デザイナーは1%から8%に上昇している。ただし、Linearに接続されたリポジトリのPRのみを集計しているため、実際の数値はこれより高い可能性がある。
注意点と解釈
この調査はLinear内部で完結するAI利用を対象にしており、外部ツールでのAI利用は含まれない。また、PRを開いた数はコードの価値を示すものではなく、トークン消費量とも相関しないとLinear社は指摘する。
さらに、AIによる時間短縮の効果は確認できず、既存作業にAI作業が加わる形で総作業時間は増加している。Linear社はこの現象を「トークン消費を超えたジェボンズのパラドックス」と表現しており、PR数が必ずしもビジネス成果に結びつくかは不明だとしている。
| 項目 | 接続チーム | 未接続チーム |
|---|---|---|
| 2年前の週間PR数 | 21 | 8 |
| 現在の週間PR数 | 65 | 10 |
The clearest indication of AI’s influence on product development is the dramatic output gains experienced by teams using coding agents over the last two years.
AIがプロダクト開発に与えた影響の最も明確な兆候は、コーディングエージェントを利用するチームが過去2年間で経験した大幅な成果向上である。
今後の見通し
Linear社は今後、トークン消費から成果までのライフサイクル全体を追跡するレポートを計画している。現在のところ、PR数の増加が企業の業績やプロダクトの質にどう影響したかは明らかになっていない。また、AI活用による時間短縮が起こらないまま作業量だけが増えるようであれば、チームのリソース配分や働き方の見直しが必要になる可能性がある。今後のレポートで、PR数の増加が実際のビジネス価値につながっているかが示されれば、AI投資の判断材料がより確かなものになるだろう。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
日本のIT企業にとって、AI採用がエンジニアだけの現象ではなく、マネージャーや非エンジニアにも広がっている点は重要です。プロダクトマネージャーやデザイナーがコードを書くようになれば、レビュー体制やガバナンスの見直しが必要になるでしょう。また、PR数が111%増えたとしても、それが成果に直結するかは別問題です。日本の開発現場では、PR数やトークン消費ではなく、ビジネス価値で測る指標を設計し、AIへの投資を判断する必要があります。さらに、AI利用が作業時間を減らしていないという結果は、導入効果を時間短縮に求める従来の考え方を見直すきっかけになります。
気になる点
- Linearの調査結果は日本の開発チームにも当てはまりますか?
- この調査はLinearの有料ワークスペースの利用者に基づくもので、市場全体を代表するものではありません。日本企業でも同様の傾向が起きている可能性はありますが、検証には自社のデータが必要です。
- コーディングエージェントを導入すればPR数は増えますか?
- 調査では接続チームの週間PR数が2年で21から65に約3倍増え、未接続チームは8から10程度でした。ただし、元々の生産性が高いチームが多いため、因果関係やビジネス成果への影響は公表されていません。
- AIを活用すると開発者の時間は減りますか?
- 報告によれば、既存タスクにかかる時間はほぼ横ばいで、AIとのやり取りなどが新たな作業として増えており、総作業時間はむしろ増える傾向にあります。時間短縮ではなく、作業量の増加として現れています。
用語解説
- コーディングエージェント
- 開発者が指示を出すと自動でコードの生成や変更を行うAIツール。課題解決やPR作成を自律的に実行する。
- プルリクエスト (PR)
- コードの変更を共有リポジトリに統合する前にレビューを依頼する仕組み。開発の進捗指標として使われる。
- Linear
- ソフトウェア開発チーム向けのプロジェクト管理ツール。課題管理やロードマップ管理の機能を持つ。
出典
AI usage patterns in software teams
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