
- XPUをNVLinkに接続し、Ethernet比でレイテンシ3分の1、パケットレート10倍を実現
- 将来は1,152基まで拡張、MGXやDSXなど既存基盤で開発コストを削減
- GPUとXPUが同じラック・冷却・電源を共有できる統合運用を提案
NVLink Fusionとは
NVIDIAは2026年8月24日(米国時間)、カスタムXPUをNVIDIAのAIインフラに接続する「NVLink Fusion」を発表しました。AIファクトリーのような大規模基盤を構築する際、開発者はXPU単体の設計だけでなく、ネットワーク、ラック、冷却、ソフトウェアまで含めた全体設計を考慮しなければなりません。NVLink Fusionは、これらの複雑な工程をNVIDIAの実績ある技術基盤に任せ、XPU開発者は自社の差別化に集中できるようにします。
具体的には、XPUをNVLinkスケールアップドメインに取り込みます。第6世代NVLinkにより、72基のXPUを高帯域・低レイテンシで接続します。XPU間転送のエンドツーエンドレイテンシは、汎用Ethernetを使う代替ソリューション比で3分の1、パケットレートは10倍高いとされています。
技術的な新しさ
NVLink FusionはCPU接続にもNVLink-C2Cを採用しています。XPUとNVIDIA Vera CPUまたは他社製CPUを接続する際、PCIeインターフェース比で最大6倍のエネルギー効率を実現します。制御系と計算系の間の障壁を下げるため、エージェント型AIなどのワークロードで効果を発揮するとみられます。
NVIDIAは将来のNVLinkロードマップとして、最大1,152基のアクセラレータで構成するドメインや、Co-Packaged Optics(光電融合技術)を計画しています。また、GB300 NVL72システムは、NVL72を使わない構成と比較してスループットとインタラクティブ性が大幅に向上するといいます。
エコシステムと製造
NVLink Fusionは、ASIC設計、CPU、IP、光インターコネクトの各パートナー企業からなるエコシステムに支えられています。インテルのTim Wilson氏は「NVLink Fusionにより、顧客はCPUアーキテクチャ、性能レベル、ソフトウェア機能を、自分たちが重視するワークロードに合わせて選択できる」と述べています。
採用企業は、NVIDIA MGXのラックスケールアーキテクチャと、Vera Rubin NVL72などで使われるサプライチェーンを利用できます。製造パートナーが設計と統合を担当し、MGXサプライヤーがラック、冷却、電源などを提供します。QCTのJack Luoh氏は、Vera Rubin NVL72では製造ラインのほぼ100%を自動化しており、NVLink Fusionを採用すればその投資を活用できると話しています。
工場設計と運用
AIファクトリーの建設計画は、半導体の選定より先に始まります。電源調達や設備設計、冷却、ラック配置などは、アクセラレータの構成が決まる前から検討が必要です。NVLink Fusionは、XPUベースのシステムとVera Rubin NVL72が同じラックフットプリント、ネットワーク、冷却、電源供給、管理システムを共有できるため、シリコンの構成を後回しにして構築を進められます。
NVIDIAはDSX参照設計に基づき、建物、電源、冷却、計算、ネットワークを共同設計します。Omniverse DSX AI Factory Blueprintは、ギガワット規模のAIファクトリーのデジタルツインとオープンな参照設計を提供します。ラックレベルでは、ファンやケーブル、ホースのない100%液冷の参照トレイを採用し、残りのラックを稼働させたままトレイを交換できます。ソフトウェア面では、NCCL、Dynamo、NIXL、Mission Controlなどで混在するAIインフラを一元的に運用します。
| 指標 | NVLink Fusion | 従来方式 |
|---|---|---|
| XPU間レイテンシ(Ethernet比) | 3分の1 | 基準 |
| パケットレート(Ethernet比) | 10倍 | 基準 |
| CPU接続のエネルギー効率(PCIe比) | 最大6倍 | 基準 |
NVLink Fusion gives customers the ability to choose the CPU architecture, the performance level, the software capabilities that best meet their needs for the workloads that they care about,
NVLink Fusionにより、顧客はCPUアーキテクチャ、性能レベル、ソフトウェア機能を、自分たちが重視するワークロードに合わせて選択できる。
今後の見通し
現時点では、NVLink Fusionの実運用データは公開されておらず、発表時点ではベンチマークやコスト情報は限られています。今後、実際に採用するハイパースケーラやAIネイティブ企業の事例が登場すれば、その効果を定量的に評価できるようになるでしょう。また、ロードマップにある1,152基対応やCo-Packaged Opticsの実装時期が明らかになれば、大規模AIファクトリーでの適用範囲も判断できます。NVIDIAの発表が先行しているため、実証実験や第三者の評価が今後必要となるとみられます。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
日本のIT企業にとって、カスタムXPUや半導体設計に取り組む企業は、NVLink Fusionを利用すればNVIDIAエコシステムと互換性のある製品を短期間で開発できる可能性があります。また、AIファクトリーを運用する企業は、GPUとXPUを混在させながらも、ラックや冷却、ネットワーク、管理システムを共通化できるため、ハードウェアの調達リスクを分散しやすくなります。ただし、NVIDIAの技術基盤への依存度が高まるため、競合するオープンなスケールアップ技術との比較や、ライセンス条件などの確認は欠かせません。既存のNVIDIA基盤を導入済みの企業は、NVLink Fusionの採用コストと運用面の利点を慎重に評価する必要があります。
気になる点
- NVLink Fusionは既存のNVIDIA GPUと一緒に使えるのですか?
- はい、NVLink FusionはXPU専用の技術ではありません。XPUベースのシステムとGPUベースのシステム(例: Vera Rubin NVL72)は、同じラックフットプリント、ネットワーク、冷却、電源供給、管理システムを共有できます。既存のGPU環境と混在して運用することを想定しています。
- 従来のEthernetスケールアップと比べ、どのくらい性能が変わるのですか?
- NVLink Fusionは、XPU間転送のレイテンシがEthernetベースの代替ソリューション比で3分の1、パケットレートは10倍になります。これにより、大規模モデルの学習や推論で利用率の低下を防ぎ、トークンあたりのコストを抑えられるとNVIDIAは説明しています。
- 日本でも調達できますか?
- 現時点では、日本市場向けの具体的な提供時期や価格は公表されていません。NVIDIAのパートナーエコシステムを通じた提供が想定されますが、詳細は今後の発表を待つ必要があります。
用語解説
- XPU
- 特定用途向けにカスタム設計されたアクセラレータ。GPUやTPUなども含む広義の処理装置を指す
- NVLink
- NVIDIAが開発したGPU・アクセラレータ間の高速接続インターフェース。高帯域・低レイテンシを実現する
- NVLink-C2C
- チップ間接続技術。CPUとアクセラレータを低遅延で接続し、PCIeより高いエネルギー効率を提供する
- MGX
- NVIDIAのラックスケールの参照アーキテクチャ。カスタムシステム構築のための標準基盤を提供する
- DSX
- AIファクトリーの建物・電源・冷却・ネットワークを共同設計するためのNVIDIAの参照設計
出典
How XPUs Meet a World-Class AI Factory
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