
- ボットがインターネットトラフィックの半数以上を占め、AI企業によるウェブ取得が急増している
- Cloudflareはサイト運営者がAIツールを遮断・許可・課金の3通りに制御できる仕組みを提供
- Prince氏は402プロトコルを復活させ、CoinbaseやStripeと少額課金を検討中と説明
何が語られたのか
Cloudflareの共同創業者兼CEOであるMatthew Prince氏が、The Vergeのポッドキャスト「Decoder」に出演した。今回は「ビジネスの未来」を扱う2回シリーズの1回として公開されている。Prince氏は同社について、350以上の都市に拠点を持ち、数千のデータセンターを運用する巨大なネットワークだと説明した。ウェブサイトとAIエージェントの間に入る立場にあることが、今回の議論の前提になっている。
Cloudflareは6月の時点で、ボットがインターネットトラフィックの半数以上を占めたと発表した。Prince氏によれば、AI企業によるウェブの取得と、AIエージェントが利用者の代わりにウェブ上で操作する動きの両方が増えている。同社はサイト運営者に対し、AIツールをすべて遮断する、すべて許可する、あるいはアクセス料を払うものだけを許可する、といった選択肢を用意しているという。
逆転は前倒しで起きた
Prince氏は、自動トラフィックが人間のトラフィックを追い越す時期について、複数回にわたり予測を修正してきた。2025年11月のWeb Summitでは2027年後半、2026年3月のSouth by Southwestでは2027年前半と説明した。そして同年5月、チームから自動トラフィックが人間を上回ったと報告を受けたという。
同氏は、5年後に自動トラフィックが人間の1,000倍になるとの見方を示した。人間側が減るからではなく、自動化されたトラフィックが爆発的に増えるためだという。ただし本人は「これまでの予測はすべて外れてきた」と留保を付けている。増えたトラフィックを支える帯域やサーバーの費用を誰が負担するかが課題になる。
広告に代わる402課金
Prince氏は、30年以上にわたりウェブの成長を支えてきたのは広告であり、それを最も強く形作ったのはGoogleだと述べた。GoogleはDoubleClickの買収やGoogle Analyticsなどを通じて、オンライン広告のエコシステムを築いてきたという。しかしボットは広告をクリックせず、ブランドにも反応しないため、このモデルが通用しなくなると同氏は指摘する。
代わりに挙げたのが、Netscapeの最初のバージョンにあったとされる402プロトコル(Payment Required)だ。当初403と口にしたが、直後に402と訂正している。CoinbaseやStripeと協力し、コンテンツへのアクセス1回につき1セントの何分の一かを受け取る仕組みを検討しているという。支払いの原資はAIエージェントの利用者が払う料金で、SpotifyやApple Musicの仕組みに近いと説明した。
AI企業に必要な3つ
Prince氏はAIサービスへの需要について、Anthropicが1カ月で100億ドルの売上を追加したことを例に挙げ、非常に大きいと述べた。そのうえで、AI企業に必要なのは人材と研究者、チップ、そしてデータの3つだと整理した。
人材とチップは現在不足しているが、状況は変わっていくとみている。世界中の大学がAI部門を整備して人材を育成しており、チップもNvidiaだけでなくAMDやQualcomm、大手クラウド事業者が独自開発を進めているためだ。
一方でデータは逆方向に動いていると述べた。これまでインターネットは開放され、ボットは作成されたものすべてにアクセスできたが、コンテンツ制作者の間で「人間には無料で提供しても、ボットには対価を求める」という流れが出てきているという。ボットには広告を表示できないため、従来の「与えて得る」関係が成立しないことが背景にある。
残る不確実性
Prince氏は、課金の仕組みそのものよりも、それを立ち上げるインセンティブを心配していると述べた。サイトを運営しても顧客の大半がボットなら、運営を続けずにTikTokのような別の場へ移るかもしれないという懸念だ。
今回のインタビューでは、課金の開始時期や価格、対象となる国や地域については明らかにされていない。また、Prince氏が示した予測の多くは本人が認める通り過去に外れており、数字をそのまま前提にするのは適切ではない。
| 予測を述べた時期 | 自動トラフィックが人間を超える時期 |
|---|---|
| 2025年11月(Web Summit) | 2027年後半 |
| 2026年3月(South by Southwest) | 2027年前半 |
| 2026年5月 | すでに人間を上回った |
And, the traditional model of how to pay for that, which was advertising, doesn't work for bots. Bots don't click on ads. They don't respond to what we traditionally think of as a brand.
そして、その費用を支払う従来の方法である広告は、ボットには通用しません。ボットは広告をクリックしません。彼らは、私たちが従来ブランドと考えてきたものに反応することはありません。
今後の見通し
CloudflareはCoinbaseやStripeと連携した少額課金の実装を進めているとみられるが、開始時期や料金体系は公表されていない。まずは402プロトコルを使ったアクセス単位の課金がどの程度の規模で機能するか、導入したサイト運営者の収益がどう変わるかが焦点になる。AI企業が学習データの取得に対価を払う流れが広がるかどうかも、ウェブ上のコンテンツ供給量を左右するとみられる。Cloudflareの決算やボット向け課金の利用率、あるいは参加するコンテンツ事業者の数が明らかになれば、このモデルが現実のものになるかを判断できる。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
Cloudflareを利用している、あるいはAIクローラーにコンテンツを取得されている企業にとって、この議論は自社サイトの収益設計に直結する。ボットを遮断するか、許可するか、課金するかを選べるということは、コンテンツの提供条件を自社で決める必要が出てくることを意味する。広告収入がボットには効かないという前提に立てば、記事やデータを公開する側は、学習用クローラーへの対応方針を技術面でも契約面でも整理しておく必要があるとみられる。402プロトコルを使った少額課金が普及すれば、決済手段の実装や、AIエージェント経由のアクセスをどう計測するかが実務課題になる。一方で収益が保証されるわけではなく、サイト運営者の負担が増える可能性もある。自社のコンテンツがどこでどう使われているかを把握する作業が、まず必要になりそうだ。
気になる点
- Cloudflareの課金の仕組みは日本のサイトでも使えるのか
- 原文では対象地域や提供時期は明らかにされていない。Prince氏はCoinbaseやStripeと協力して仕組みを作っていると述べており、Cloudflareのネットワークは350以上の都市で運用されている。日本のサイト運営者がいつから利用できるかは、今後の発表を待つ必要がある。
- ボットへの課金は広告収入の代わりになるのか
- Prince氏はアクセス1回につき1セントの何分の一かを受け取る構想を語っているが、実際の収益規模は示されていない。同氏自身、顧客の大半がボットならサイト運営を続けないかもしれないと懸念を示しており、広告に匹敵する収益源になるかは現時点では判断できない。
- Cloudflare自身はAIで人員を削減したのか
- 今年初めに1,000人以上、会社全体の20%にあたる人員を削減したと伝えられている。Prince氏はその判断について、Wall Street Journalに「How I choose which Cloudflare employees to replace with AI」と題する寄稿を書いた。ただし原文では対象職種や選定基準の詳細までは触れられていない。
用語解説
- ボット
- 人間以外の自動プログラムによるアクセス。AI企業による学習目的のウェブ取得や、AIエージェントによる操作を含む。
- 402 Payment Required
- 支払いが必要であることを示すHTTPステータスコード。Prince氏によればNetscapeの最初のバージョンで定義されていた。
- マイクロペイメント
- 1回あたり1円未満のような少額の決済を積み重ねる仕組み。1990年代から構想が語られてきたとされる。
- 自動トラフィック
- ボットやAIエージェントなど、人間以外が発生させる通信。Cloudflareはこれが人間の通信を上回ったと発表した。
- AIエージェント
- 利用者の指示を受けて、ウェブ上での操作を代行するソフトウェア。今回のインタビューでは課金の支払い元として言及された。
出典
Can Cloudflare CEO Matthew Prince save the web from AI?
https://theverge.com/podcast/1000344/cloudflare-matthew-prince-google-zero-ai-web-advertising
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