
- AWSがAgentCoreの新計算基盤Runtime Instancesの活用法をブログで解説
- 3エージェントを1台のGPUインスタンスに同居させ、共有ファイルで連携
- 複数日セッション・永続ボリューム・ECRとS3の混在配置に対応
何が示されたのか
AWSの機械学習ブログが、Amazon Bedrock AgentCoreのRuntime Instances上でマルチエージェントの音楽制作パイプラインを構築する手順を公開した。題材は、楽曲を作るComposition、音質を整えるDelivery、配信前チェックを行うComplianceの3エージェントである。プロデューサーが指示を出すと、最終的に再生可能な.wavファイルと3つのレポートが得られる流れになっている。記事は、前提条件の確認からエージェント定義、容量プロバイダの作成、デプロイ、共有セッションIDでの呼び出し、チームごとのバージョン更新までの5ステップで構成されている。
AgentCoreには計算基盤の選択肢が2つある。サーバーレス型のMicroVMと、今回取り上げられたRuntime Instancesだ。両者は同じランタイムAPIを使うが、Instancesは複数日にわたるセッション、GPU、永続ボリューム、1インスタンスへの複数エージェント同居を追加で提供する。記事は、数時間で切れるサーバーレスセッションでは、数日にわたって文脈を共有しながら進む創作ワークフローに向かない、という課題意識から始まっている。
技術的な要点
最大の特徴はエージェントの「同居」である。同じ容量プロバイダ上で同一のruntimeSessionIdを指定して呼び出すと、複数のエージェントランタイムが同じEC2インスタンスに配置され、ファイルシステムを共有できる。これにより、Compositionが書き出した.wavをDeliveryが読み取り、その成果物をComplianceが独立に再計測する、という受け渡しが成立する。
Compositionエージェントは、Claude Sonnet 4.6で制作ブリーフを作り、オープンソースの楽曲生成モデルACE-Stepをインスタンス上のNVIDIA L4で実行する。記事によれば、48kHzステレオの20秒を約9秒でレンダリングできるという。モデルと依存関係は永続ボリューム上に置かれ、セッション内で一度構築すれば、翌日以降の呼び出しでも再利用される。
パッケージ形式も混在できる。CompositionとDeliveryはAmazon ECRのコンテナイメージ、ComplianceはAmazon S3上のzipファイルとしてデプロイされ、同じ容量プロバイダ上で共存する。各チームが自分のペースで新バージョンを出荷できる点も強調されている。記事では、Strands Agentsで実装する際の注意点として、エントリポイントの引数名を「context」にする必要があること、Agentをモジュールスコープではなくハンドラ内で生成すべきことが挙げられている。
MicroVMとの違い
両者は対応フレームワーク(CrewAI、LangGraph、LlamaIndex、Strands Agents)や基盤モデルの選択、MCP・A2A連携、そしてランタイムAPIが共通している。違いは下にある計算モデルだ。MicroVMはサーバーレス型で、コールドスタートが速く、セッションが分離され、従量課金で利用する。一方、Runtime InstancesはAWSが管理するEC2インフラ上で、長く動き続けるエージェントワークフローを想定している。
配置の考え方も異なる。MicroVMでは1つのランタイムが1つのエージェントをホストするが、Instancesの1セッションは複数のエージェントをホストできる。記事では、同じ容量プロバイダ上で同一のruntimeSessionIdを指定すると、複数のエージェントが同じEC2インスタンスに配置され、ファイルシステムを共有できると説明されている。次の表に、記事で示された違いをまとめる。
分かっていない点
記事はハンズオン形式で、前提条件、エージェント定義、容量プロバイダ作成、デプロイ、呼び出し、個別更新という流れを順に説明する。前提条件には、AWSアカウント、AWS CLI、サブネットとセキュリティグループを持つVPC、Amazon BedrockでのClaude Sonnet 4.6へのモデルアクセス、OCI互換のコンテナツール、Python 3.10以上、boto3 1.36.0以上またはbotocore 1.43.72以上が挙げられている。古いバージョンにはcreate_capacity_providerが無く、deploy.pyが失敗すると明記されている。
一方、Runtime Instances自体の料金や対応リージョンは原文の範囲では示されていない。GPUインスタンスの利用にはコストがかかるとみられるが、具体的な金額の記載はない。また、容量プロバイダ作成に必要な2つのIAMロールのうち、2つ目の説明は原文が途切れているため詳細は確認できない。完全なサンプルコードはAgentCore samplesのGitHubリポジトリで公開されているとされている。
| 項目 | MicroVM | Runtime Instances |
|---|---|---|
| 計算基盤 | サーバーレス | AWSマネージドのEC2 |
| セッション | 数時間が上限 | 複数日にわたって持続 |
| エージェント配置 | 1ランタイムに1エージェント | 1インスタンスに複数エージェントを同居 |
Both use the same runtime APIs, but Instances add multi-day sessions, GPUs, persistent volumes, and the ability to colocate multiple agents on a single instance.
両者は同じランタイムAPIを使うが、Instancesは複数日にわたるセッション、GPU、永続ボリューム、そして複数のエージェントを単一インスタンス上に同居させる機能を追加する。
今後の見通し
Runtime Instancesは、単発のリクエスト応答ではなく、数日にわたって状態と成果物を引き継ぐエージェント向けの基盤として位置づけられる。今回の題材は音楽制作だが、記事が示す仕組み(共有セッションIDによる同居、GPU、永続ボリューム、混在アーティファクト)は、映像処理やシミュレーションなど長時間・大容量のワークフローにも応用できる可能性がある。ただし、料金や対応リージョン、同時実行数の上限といった実務判断に必要な情報は原文にない。これらの情報がAWSのドキュメントで明らかになれば、既存のMicroVMベースのエージェントを移すべきかどうかを判断しやすくなるだろう。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
日本のIT企業にとって、この発表の意味は「エージェントをどう運用するか」という論点が具体化した点にある。これまでエージェントは、サーバーレス関数のように短命なセッションで動かすのが一般的だった。しかし、複数のエージェントが数日にわたって同じ成果物を編集し合う業務、たとえば制作・校正・審査のような分業では、状態と大容量ファイルを保持し続ける基盤が必要になる。Runtime Instancesは、GPUと永続ボリュームを備えたEC2をAgentCoreのAPI経由で扱えるようにするもので、自前でEC2とキューとストレージを組み合わせていた構成を置き換える候補になり得る。ただし料金体系とリージョン対応が不明なため、まずはPoCで検証し、コストと運用負荷を自前構成と比較する段階にとどめるのが現実的だと考えられる。
気になる点
- 既存のMicroVMベースのエージェントは、そのままRuntime Instancesへ移行できますか。
- 記事によれば、両者は同じAgentCoreランタイムAPIを使い、対応フレームワークも共通です。ただしInstances側では容量プロバイダの作成や、同じruntimeSessionIdで呼び出して同居を設計する手順が必要になります。移行の可否や細かな制約は原文では明記されていません。
- 複数のエージェントを同じインスタンスに載せるには何が必要ですか。
- 記事では、2つのエージェントランタイムが同じ容量プロバイダに属している場合、同一のruntimeSessionIdを指定して呼び出すことで同じEC2インスタンスに配置され、ファイルシステムを共有できると説明されています。エージェント側はエントリポイントの引数名をcontextにし、セッションIDを読み取る実装が必要です。
- GPUの性能と料金はどうなっていますか。
- 記事には、CompositionエージェントがNVIDIA L4上でACE-Stepを動かし、48kHzステレオの20秒を約9秒でレンダリングしたと記載されています。一方、Runtime Instancesの利用料金やGPUインスタンスの単価は原文に示されていません。コストを見積もるには別途の情報が必要です。
用語解説
- AgentCore Runtime Instances
- AWSが提供するエージェント実行基盤の計算オプション。マネージドEC2上で複数日セッションやGPU利用が可能
- MicroVM
- AgentCoreのサーバーレス実行オプション。短命なセッションを分離して実行し、従量課金で利用する
- コロケーション
- 複数のエージェントを同じ計算インスタンス上に配置し、ファイルシステムなどを共有させること
- ACE-Step
- 楽曲生成向けのオープンソース基盤モデル。記事ではインスタンス上のGPUで実行される
- Strands Agents
- AWSが提供するエージェント構築用フレームワーク。記事のサンプル実装で使われている
出典
Build a multi-agent music production pipeline on Amazon Bedrock AgentCore Runtime Instances
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