
- OpenAIがナビエ・ストークス問題の解を発見と発表。約90年未解決の難問とされる
- 社内のAIモデルと1万の並行エージェントを使用、GPT-6 Astraより強力と説明
- 発表の経緯をめぐり数学者と軋轢、独立諮問委員会を設置するも疑問の声
何が発表されたのか
OpenAIは、流体の運動に関わるナビエ・ストークス問題の解を発見したと発表しました。同社の説明によれば、この問題は約90年間未解決で、7つあるミレニアム懸賞問題の一つに数えられます。それぞれの解決には100万ドルの賞金が用意されているとされています。
解法には、社内で開発したAIモデルを使ったとされます。このモデルは新たに公開されたGPT-6 Astraよりも強力だとされ、1万の並行エージェントを組み合わせて用いたと説明されています。訓練は8月28日に始めたとされています。
何が新しいのか
原文によれば、OpenAIはこれまでも複数の長年の数学問題で成果を発表しており、その一部は研究者が現在のシステムに期待していた能力を大きく超えるものでした。今回の発表もその延長線上にあります。
注目されるのは、公開モデルではなく社内モデルを使い、多数のエージェントを並列に動かす構成です。原文はこれを、AIが数学を急速に変えつつあることの顕著な例だと位置づけています。
数学者との軋轢
一方で、発表の進め方をめぐって反発が起きています。原文は、他研究者が進めていると聞いてから、OpenAIが最後に資源を投入して先に結果を出そうとした可能性を伝えています。これにより、成果の先取りやスパイ行為、学術界の長年の規範の違反といった指摘が生じたとされます。
数学者のAndreas Thom氏は、自身と同僚がChatGPTと交わしたやりとりが成果に寄与した可能性があると指摘しました。OpenAIが発表した10件の結果の一つは、Thom氏の専門である非ソフィック群に関わるもので、同社はThom氏とGábor Kun氏の先行研究に大きく依拠したことを認めています。
ロンドン大学クイーン・メアリー校のAbhishek Saha教授は、OpenAIが「数学者が一般には行わない種類のこと」をしたと述べています。
残る疑問と課題
OpenAIは新たに、数学者の独立諮問委員会を設置すると発表しました。数学研究や数学コミュニティとの関わり方、新しい結果の提示や公開の方法について助言する役割とされています。
ただし、原文によればこの委員会は突然の発表で多くの数学者を驚かせ、何をするのか、どの程度影響力を持つのか、OpenAIが実際に耳を傾けるのかといった基本的な疑問が残っているとされます。少数の著名な研究者だけで広いコミュニティを代表できるのかという懸念も示されています。
委員会には最初の課題として、未公開モデルが生み出したとする多数の結果の公開を調整する役割が与えられています。この大量の成果が分野に何をもたらすかについて、研究者の間では不安も広がっているとされます。
Mathematicians want to advance the field. OpenAI wants to win.
数学者は分野を前進させたい。OpenAIは勝ちたいのだ。
今後の見通し
今後注目されるのは、OpenAIが未公開モデルによる多数の成果をどのように公開するかです。原文は、この大量の結果の公開が数学分野に影響を与えうるとし、研究者の不安を伝えています。独立諮問委員会が実質的な助言機能を果たせるか、OpenAIがその意見に従うかが、コミュニティとの関係修復の試金石になるとみられます。逆に、発表の進め方次第では反発がさらに強まる可能性もあります。委員会の権限や意思決定への関与の程度、公開される結果の検証方法が明らかになれば、評価が可能になると考えられます。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
この一連の動きは、AIが数学のような高度な知的作業をどこまで加速できるかを示す事例として、日本のIT企業や開発者にとっても無関係ではありません。自社の研究開発にAIを活用する際、成果の扱いや学習データの出所、先行研究へのクレジットといった論点は同じように生じます。とくに、外部の研究者や専門家コミュニティとどう協力し、どのように成果を公開するかは、企業の評判に直結します。原文が伝える軋轢は、性能の高さだけでは信頼を得られないことを示しています。AIを使った研究や製品開発を進めるうえで、公開の手順やデータの透明性をあらかじめ設計に組み込む重要性が増すと考えられます。
気になる点
- OpenAIが解いたとされる数学の問題は何ですか。
- ナビエ・ストークス問題です。流体の運動に関わる問題で、約90年間未解決とされ、7つあるミレニアム懸賞問題の一つに数えられます。解決者には100万ドルの賞金が用意されていると原文は伝えています。
- 新しい諮問委員会は何をするのですか。
- 原文では、OpenAIなどのAI企業に対し、数学研究や数学コミュニティとの関わり方、新しい結果の提示・公開の方法について助言するとされています。ただし、具体的な権限や実効性、どこまで意見が反映されるかは現時点では公表されていないとされます。
- この社内モデルは日本からも使えますか。
- 原文では、解法に使われたのは社内のAIモデルとされており、公開されたGPT-6 Astraより強力だと説明されています。一般提供や公開の予定については原文に記述がなく、現時点では利用できないとみられます。
用語解説
- ミレニアム懸賞問題
- 原文によれば7つある数学の未解決問題。解決者には各100万ドルの賞金が用意されているとされる。
- ナビエ・ストークス問題
- 液体や気体の流れに関わる数学の未解決問題。約90年間未解決とされる。
- 非ソフィック群
- 群論における概念。原文では数学者Andreas Thom氏の専門分野として言及されている。
- 並行エージェント
- AIモデルを複数同時に動かして作業させる仕組み。原文では1万の並行エージェントを使ったとされる。
出典
All the drama around AI’s takeover of mathematics
https://theverge.com/ai-artificial-intelligence/1004933/ai-math-openai-breakthrough-solution
AI導入も顧問も、お任せください
何から手をつけるか、どこまでAIに任せるか。自社の業務に合わせて整理し、導入から運用まで伴走します。相談だけでも構いません。
AI導入について相談する