
- NVIDIAがVera Rubinのラック設計とコンピュートトレイ設計をMGXを通じてOCPに提供
- MGX 1.2は液冷5,000Aバスバーやブラインドメイト液冷を追加し最大250kWを支援
- DSX AI Factory向けにネットワーク設定やクラスタ検証など4つのOSS部品を追加
OCPで示された共通基盤
NVIDIAはサンノゼ・マッケナリー・コンベンションセンターで開催されたOpen Compute Project(OCP)Global Summitで、次世代AIインフラの共通基盤を作るための新しいパートナーシップと貢献を発表しました。中心となるのは、NVIDIA Vera Rubinのラック設計とコンピュートトレイ設計を、オープンなNVIDIA MGXアーキテクチャを通じてOCPに提供したことです。これによりシステムビルダーは、次世代AIファクトリ向けインフラを開発するための共通の土台を得られるとしています。
発表の範囲は、AIファクトリ本体、それを動かす電力網、そして現代のアクセラレーテッドコンピューティングの中核となるラックスケールアーキテクチャにまたがります。具体的には、ハイパースケーラーとのAIファクトリ設計・電力網レジリエンスに関するオープン標準の公開、DSX AI Factory向けオープンソースソフトウェアの提供、MetaによるSpectrum-6 Ethernetの採用、Visionbayの800V DC設計、CiscoとのUSFP標準、GoogleとのFalcon Transport対応が含まれます。NVIDIAのIan Buck氏は、オープンなインフラが世界中でAIファクトリを拡大するための重要な要素になりつつあると説明しました。
MGX 1.2の主な変更点
NVIDIAはOCPのOpen DC Initiativeを通じ、第3世代MGX AIデータセンターリファレンスデザインへの貢献に参加しました。MQDやMQDBといったオープンな液冷技術と組み合わせることで、実績あるAIファクトリ設計を業界標準に引き上げ、他社が採用・製造・拡張できるようにする狙いです。
Vera Rubin AIファクトリ向けに更新されたMGX 1.2仕様では、ラックスケールのブラインドメイト液冷、相互運用可能なラックスケール相互接続、より高出力なAIシステム向けに設計された液冷5,000Aバスバーが追加されました。さらに19インチ機器のネイティブサポートと、高密度ラック設計も加わっています。
モジュール性も拡張され、構成可能なI/Oベイ、ファンレスの液冷コンピュートトレイ、標準化された電力・冷却インターフェース、エコシステムパートナーが相互運用可能な基盤を構築するための共通インフラが含まれます。最大250kWのラック配備を支え、組み立て・テスト・サービス時間の短縮によって製造とフィールドサービスを効率化するとされています。
DSX AI FactoryのOSS群
NVIDIA DSX AI factory platformは、コンピューティング、ネットワーキング、電力、冷却、設備、ソフトウェアを統合し、AIファクトリを単一の最適化されたシステムとして運用するためのプラットフォームです。その中心にあるのがDSX OSで、DSXアーキテクチャを大規模に協調的かつ再現可能な運用へ変えるオープンなオペレーティング層だと説明されています。
OCPでは、ネットワーク設定、クラスタ検証、ラック管理、ベアメタルプロビジョニングのための4つのオープンソースコンポーネントが追加されました。NVIDIA Config Managerはスイッチ設定を自動化し、NVIDIA Cluster Readiness Engineは実際のワークロードを模した負荷テストでGPUクラスタの健全性を確認してジョブクラッシュを防ぎます。NVIDIA Rack Management Serviceはラックを第一級の単位として扱うハードウェア抽象化と運用を提供し、NVIDIA Infrastructure Controller向けCluster API Providerはベアメタル配備を数日から数時間へ短縮するとされています。
これらはNVIDIA DGX Cloudの運用経験から開発されたもので、クラウドプロバイダーやソフトウェアパートナーがAIファクトリ機能を自社のマルチテナント基盤に直接組み込めるようにするとされています。開発者はDSX AI FactoryのGitHubページで、新規・既存のオープンソースコンポーネントを確認し、コントリビュートできると案内されています。
オープン標準と800V DC設計
NVIDIAはAMD、Google、Metaとともに、Open Data Center Specification v0.7を公開しました。電力アーキテクチャから冷却インフラ、物理レイアウトまでを含む、次世代AIファクトリの施設設計の統一ブループリントを定義するものです。あわせてGoogle、Meta、Microsoft、NVIDIAはOCP Grid Resilience Specificationを公開し、大規模AIインフラが電力網の混乱時にどう振る舞うべきかを定めています。仕様では、接続を維持し、自動的に応答し、2秒未満でほぼ全負荷まで復旧することが求められています。
これらの標準がオープンになったことで、世界中の機器メーカー、コロケーション事業者、データセンター運営事業者は、個別顧客の独自仕様を待たずに設計・製造・提供を始められるとしています。両仕様はNVIDIA DSXリファレンスデザインと互換性があり、施設レイアウトや電力アーキテクチャから、電力網の信号をリアルタイムに監視・応答するソフトウェアまで、検証済みの実装が得られると説明されています。
Visionbayは、800 VDCアーキテクチャを軸とした次世代AIファクトリプラットフォーム「K-1」の計画を明らかにしました。NVIDIAの800 VDCリファレンスアーキテクチャとVertivの電力・熱技術を組み合わせ、将来のVera Rubin配備を想定した設計です。ラック電力密度の上昇に伴い低電圧配電の拡張が難しくなるなか、クラスタレベルの電力センターでAC-DC変換を集中させ、800 VDCを計算資源の近くまで届ける構成をとります。既存配備の柔軟性を保ちつつ、効果の大きいところから段階的に800 VDCへ移行する設計だとされています。
MetaとSpectrum-6の協業
MetaとNVIDIAは、MetaがNVIDIA Spectrum-6 102.4Tb/s Ethernetスイッチを採用し、オープンネットワーキング上でより大規模・高性能なVera Rubin AIファクトリを構築すると発表しました。Spectrum-6はSpectrum-4比でスイッチ容量とレーンあたり帯域が2倍で、レーンあたり200GのロスレスEthernet AIファブリックを提供します。あるジョブのトラフィックが別のジョブを遅くしない性能分離も特徴とされています。
MetaのSpectrum-6ベースのスイッチ「N-IceCube」は、同社の100T液冷ラック「IcePack」に組み込まれます。N-IceCubeは、OCPに貢献されたMetaのオープンソースネットワークOSであるFBOSS上で動作します。FBOSSは、NVIDIAが開発を支援したOCP標準のSwitch Abstraction Interface上に構築されており、スイッチハードウェアをベンダー非依存で制御する方法を提供します。
両社は、Spectrum-6スイッチとConnectX-9 SuperNICで実現するSpectrum-X Multiplane技術を中核に据えています。MultiplaneはGPUトラフィックを最大8つの独立したネットワークプレーンにハードウェアで分散し、より少ないスイッチ階層と低いインフラコストで10万GPU超への拡張を可能にします。障害時には残りのプレーンへトラフィックが移り、帯域は低下してもGPUとAIアプリケーションの稼働を維持できるとされています。
| 項目 | Open Data Center Specification v0.7 | OCP Grid Resilience Specification |
|---|---|---|
| 発行に関わった企業 | NVIDIA、AMD、Google、Meta | Google、Meta、Microsoft、NVIDIA |
| 定める内容 | 電力アーキテクチャ、冷却インフラ、物理レイアウトを含む施設設計の統一ブループリント | 電力網の混乱時の挙動。接続維持、自動応答、2秒未満でのほぼ全負荷復旧 |
As AI factories grow from megawatts to gigawatts, building them takes more than advanced computing.
AIファクトリがメガワット級からギガワット級へと拡大するにつれ、その構築には高度なコンピューティングだけでは足りない。
今後の見通し
OCPで公開された仕様やオープンソース部品は、今後OCPコミュニティでの議論と実装を経て成熟していくとみられます。MGX 1.2やOpen Data Center Specification v0.7がどの程度のベンダーに採用されるのか、DSX OSの各コンポーネントがどのハードウェアで動作し、どのような条件で提供されるのかが明らかになれば、日本企業も採用可否を判断しやすくなります。また、MetaのN-IceCubeのように実際のハイパースケール環境でSpectrum-6やMultiplaneがどの程度の運用実績を積むかも注目点です。Vera Rubin世代の製品出荷時期や、800 VDC設計に対応した製品がいつ登場するかについても、続報が待たれます。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
今回の発表は、AIファクトリ向けのラックスケール設計や運用ソフトウェアが、特定ベンダーの独自仕様からOCPのオープン仕様へ移りつつあることを示しています。日本のサーバー/ラックベンダーやデータセンター事業者にとっては、MGX 1.2やOpen Data Center Specification v0.7といった共通仕様に沿って設計できれば、顧客ごとの個別対応を減らせる可能性があります。また、Config ManagerやCluster Readiness EngineなどDSX OSのオープンソース部品は、大規模GPUクラスタの構築・検証ノウハウを自前で作り込まずに取り込める選択肢になります。ただし今回の内容はNVIDIA自身のブログによる発表で、各コンポーネントの成熟度や実際の運用実績は示されていません。採用を検討する場合は、対応ハードウェアやライセンス条件、国内でのサポート体制を確認したうえで判断するのが現実的です。
気になる点
- MGXやDSX AI Factoryの成果物は誰でも利用できますか
- 原文では、Vera Rubinのラック/コンピュートトレイ設計はオープンなMGXアーキテクチャを通じてOCPに提供され、DSX OSの新コンポーネントはオープンソースとしてGitHubで公開・コントリビュート可能とされています。MGX 1.2仕様もOCPのOpen DC Initiativeへの貢献として位置づけられています。ただし、個々の仕様の利用条件やライセンスの詳細は原文に記載がありません。
- 800V DCやオープン標準は日本のデータセンターでも適用できますか
- 原文は、世界中の機器メーカーやデータセンター事業者が共通の目標として設計・製造を始められると説明していますが、日本国内での適用事例や対応製品、導入時期には触れていません。国内での適用可否や時期については、現時点では公表されていないというのが正確なところです。
- Vera Rubin世代の製品はいつ入手できますか
- 原文には発売時期や提供スケジュールの記載がありません。MGX 1.2仕様、Vera CPUラック設計、VisionbayのK-1はいずれも仕様や計画としての発表であり、実際の製品出荷時期は明らかにされていません。対応製品の時期は続報を待つ必要があります。
用語解説
- OCP(Open Compute Project)
- データセンターのハードウェアや設計をオープン化する業界団体。会員企業が仕様や設計を共有する。
- MGX
- NVIDIAが提唱するモジュラー型のラックスケールアーキテクチャ。サーバー設計の共通基盤を部品メーカーに提供する。
- SuperNIC
- NVIDIAのネットワークインターフェースカード。AIワークロード向けにネットワーク処理を高速化する。
- DPU
- Data Processing Unit。CPUの負荷を肩代わりし、ネットワークやストレージ処理を担うプロセッサ。
- DSX OS
- NVIDIA DSX AI Factoryの中核となるオープンな運用レイヤー。設備全体を統合的に管理する。
- 800 VDC
- 従来より高い800ボルトの直流配電方式。高密度ラックへの電力供給を効率化する。
出典
OCP Global Summit: Amid Ecosystem Adoption, NVIDIA Opens Vera Rubin Architecture to Help Scale AI Factories Worldwide
https://blogs.nvidia.com/blog/ocp-global-summit-vera-rubin-scale-ai-factories
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