
- 2BアクティブのMoEで、約5割大きいQwen3.6-35B-A3Bと競合すると主張
- コンテキスト長は32K→131K、語彙は65K→128Kに拡大し推論特化型に
- M5 Maxで毎秒184トークン、B300で毎秒2.1万トークン超と報告
何が公開されたのか
Liquid AIが公開したLFM2.5-24B-A2Bは、推論とツール呼び出しを端末上で実行することを想定したオープンウェイトのモデルです。学習済みの重みが公開される形式で、ベース版のLFM2.5-24B-A2B-BaseとあわせてHugging Faceで入手できます。Mixture-of-Experts(複数の専門家ネットワークのうち一部だけを使う方式)を採用し、1トークンの生成で実際に使われるアクティブパラメータは2Bです。
前身のLFM2-24B-A2Bの設計を引き継ぎつつ、最終回答の前に明示的な思考過程を生成する「推論特化型」に変わった点が特徴です。つまり、軽量なエージェントを端末側で動かすことを狙った位置づけのモデルと説明されています。
アーキテクチャと学習
構造は40層、MoEブロックあたり64エキスパートで上位4つを選ぶルーティング、gated short convolutionとGQA(Grouped Query Attention、複数のクエリでキー・バリューを共有する注意機構)のハイブリッドという点で前身を踏襲しています。一方でコンテキストウィンドウは32Kから131Kトークンに拡大しました。トークナイザも語彙を65Kから128Kへ倍増させ、非ラテン文字のトークナイズ精度を高めています。
学習量も増えています。事前学習は約17Tトークンから約33Tトークンへ拡大し、中間学習では32Kコンテキストで2Tトークン(推論・数学・コード・指示追従・多言語を重視)、131Kコンテキストで300Bトークン(長文脈を重視)を追加しています。
ポストトレーニングは5段階です。教師あり微調整、教師モデルの専門特化、非エージェントタスク向けとエージェントタスク向けの2段階のオンポリシー蒸留、そしてOpenClawやHermes Agent、Pi、OpenCodeといったエージェントハーネス内で行う強化学習で構成されます。
ベンチマークの結果
Qwen3.6-35B-A3B、Gemma-4-26B-A4B-it、Nemotron-3.5-Lightningを比較対象に、ツール使用・エージェント、知識、指示追従、数学、コーディングをカバーする16のベンチマークで評価しています。比較グループの中で最も小さいモデルでありながら、総パラメータとアクティブパラメータが約5割多いMoEと同等だとしています。
ツール使用とエージェント系の8ベンチマークのうち5つ(AutomationBench、BFCLv4、ToolSandbox、LiveClaw、τ³-Bench Banking)で首位か同等で、AutomationBenchでは次点モデルの3倍以上を記録しました。指示追従の3ベンチマークでも首位です。LiveClawは48.09対38.19でQwen3.6-35B-A3Bを上回っています。
一方、GPQA Diamond、HLE、AA-Omniscienceといった知識重視のベンチマークや、SWE-Bench Verified(OpenCode)、SciCodeなどのコーディングでは大規模モデルが優位だとしています。知識依存のタスクでは検索やウェブ検索と組み合わせるよう記事は勧めています。
推論速度と使い方
端末側ではApple M5 Maxで毎秒184トークン、Ryzen AI Max+ 395で毎秒114トークンをデコードし、比較したMoEの中で最速かつメモリ使用量が最少だとしています。次点モデルより最大1.7倍速いという記載です。GPUでは単一のNVIDIA B300で高並列時に毎秒2.1万出力トークン超に達します。
llama.cpp、MLX、vLLM、SGLang、ONNXで初日からサポートされます。transformersは5.0.0以降が必要で、OpenAI互換バックエンドとしてローカルで提供し、エージェントハーネスから接続する使い方が示されています。ポートはllama.cppとMLXが8080、vLLMが8000、SGLangが30000、LM Studioが1234です。
分かっていない点
原文にはライセンス条件や商用利用の可否についての記載がありません。オープンウェイトとしてHugging Faceで公開されているという事実のみが示されており、利用条件はモデルカードなどでの確認が必要です。量子化時の精度変化や必要メモリ量の具体的な数値も示されていません。
また語彙拡大により非ラテン文字のトークナイズが改善されると説明されていますが、日本語タスクの個別スコアは記載されていません。24B規模のモデルをどの範囲の端末まで動かせるかについても、必要メモリの情報が不足しているため現時点では判断しにくい状況です。
| 項目 | LFM2.5-24B-A2B | Qwen3.6-35B-A3B |
|---|---|---|
| LiveClawのスコア | 48.09 | 38.19 |
| 総パラメータ(名称より) | 24B | 35B |
| アクティブパラメータ | 2B/トークン | LFM比で約50%多い |
Best-in-class agent: Competitive with Qwen3.6-35B-A3B, a model with ~50% more total and active parameters, on agentic and tool-use tasks, scoring 48.09 on LiveClaw versus 38.19.
最高水準のエージェント:総パラメータとアクティブパラメータが約50%多いQwen3.6-35B-A3Bに対し、エージェントおよびツール使用タスクで競合する性能を持ち、LiveClawでは38.19に対して48.09を記録した。
今後の見通し
Liquid AIは微調整チュートリアルと各エージェントハーネス向けの設定ガイドを用意しており、今後は派生モデルや量子化版の登場が想定されます。ただしベンチマークは自社発表であり、独立した第三者による再現評価が出れば位置づけがより明確になるでしょう。ライセンス条件や必要メモリ量、日本語を含む非ラテン言語での実測性能が公開されれば、日本の企業が導入可否を判断できる材料がそろうとみられます。エージェント系ベンチマークの首位争いは更新が早く、他社の後継モデルの登場次第で優位性は変わり得ます。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
日本のIT企業にとって重要なのは、エージェントの推論を端末側に置ける選択肢が現実味を帯びてきた点です。2BアクティブのMoEであれば、クラウドAPIに毎回送る場合と比べてレイテンシと通信コストを抑えやすく、入力データが端末外に出ないため医療・金融・製造など機密性の高い業務のPoCに向きます。OpenAI互換バックエンドとしてローカルで提供できるため、既存のエージェントハーネスやツール呼び出しの実装を流用しやすいのも実務上の利点です。一方で総パラメータ24B規模のモデルは、M5 MaxやRyzen AI Max+のような比較的余力のある端末が前提とみられ、スマートフォンを含むあらゆる端末で動くとは限りません。知識系タスクやコーディングでは大規模モデルが優位とされており、検索との併用が前提になります。導入判断にはライセンス条件と必要メモリ、日本語での実測性能の確認が欠かせません。
気になる点
- 手元のPCで動かせるのか、必要なメモリはどれくらいか
- 記事ではApple M5 Maxで毎秒184トークン、Ryzen AI Max+ 395で毎秒114トークンというデコード速度が示されており、比較対象の中でメモリ使用量が最少だとされています。llama.cpp、MLX、vLLM、SGLang、ONNXで初日から利用できます。ただし必要メモリ量の具体的な数値は原文に記載がないため、実際に動かせるマシンの条件はモデルカードなどで確認する必要があります。
- 日本語の扱いは改善しているのか
- 語彙が65Kから128Kトークンへ倍増し、非ラテン文字のトークナイズ精度が向上すると説明されています。日本語もこの対象に含まれるとみられますが、日本語ベンチマークの個別スコアは原文に記載がありません。実際の日本語性能は、公開後の評価結果や自身のタスクでの検証を待つ必要があります。
- 商用利用やライセンス条件はどうなっているのか
- 原文には、LFM2.5-24B-A2Bとベース版がオープンウェイトとしてHugging Faceで公開されているという記載のみで、ライセンス名や商用利用の可否には触れていません。導入検討時にはモデルカードや配布ページで利用条件を確認する必要があります。現時点で原文から読み取れる範囲では判断できません。
用語解説
- MoE
- Mixture-of-Experts。複数の専門家ネットワークのうち一部だけをトークンごとに使う方式で、総パラメータを増やしつつ計算量を抑えられる。
- アクティブパラメータ
- 1トークンの生成で実際に計算に使われるパラメータ数。総パラメータより少なく、推論コストや速度に直結する。
- GQA
- Grouped Query Attention。複数のクエリでキーとバリューを共有し、推論時のメモリ使用量と計算量を削減する注意機構。
- オンポリシー蒸留
- モデル自身が生成した出力を使って、教師モデルの振る舞いを学ばせる蒸留手法。
- エージェントハーネス
- モデルにツール呼び出しや処理ループを与え、エージェントとして動作させるための実行基盤。
- オープンウェイト
- 学習済みの重みが公開され、ダウンロードして利用・改変できるモデルの形式。
出典
Run fast, private agents on-device with LFM2.5-24B-A2B
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