この記事について海外で公開された情報をもとにAIが要約・解説した記事です。原文の翻訳ではありません。正確な内容は記事末尾の出典元をご確認ください。
この記事の要点
  • 40言語の文字起こし、31言語の翻訳、13言語の話者分離を1つのチェックポイントで担う
  • Hugging Face Open ASR Leaderboardの英語でオープンウェイト1位(平均WER 5.33%)
  • 学習データのパイプラインGranary v2とファインチューニング手順を同時公開

発表されたモデルの概要

NVIDIAが公開したNemotron 3.5 Transcribeは、録音済み音声をテキストに変換するオープンウェイトの音声モデルである。単なる文字起こしにとどまらず、話者ダイアライゼーション(誰がいつ話したかの識別)、翻訳、音声に対する質問応答を同じチェックポイントで処理する。対応範囲は40言語の文字起こし、英語との相互翻訳31言語、話者識別13言語で、最長1時間の録音と最大8話者を扱えると説明されている。

出力は自然言語のプロンプトで指示できる。「この録音を文字起こしして各話者にラベルを付けて」「この音声を英語に翻訳して」「この会議で決まったことは何か」といった指示を切り替えるだけで、同じ音声から異なる成果物を得られる。医療分野の例として、HbA1cやmetforminといった用語候補を与え、音声に裏付けがある場合のみ使うよう指示するプロンプトが示されている。

モデルカードには推奨プリセット、プロンプトガイド、タスク別の言語対応表が用意され、単語レベルのタイムスタンプにも対応する。記事では、リアルタイム音声・映像基盤を提供するAgoraが、録画した授業の文字起こしを再生画面と並べて表示するデモに単語レベルタイムスタンプを使った事例が紹介されている。

プロンプトで出力を切り替える仕組み

技術的な特徴は、音声認識と言語モデルを分離せず、1つのモデルで指示に応じた生成を行う点にある。音声エンコーダに、MambaとTransformerを組み合わせたMoE(専門家の集まりを入力ごとに使い分ける構造)の言語モデルを接続しており、パラメータは合計30Bだがトークンごとに活性化するのは約4Bにとどまる。このため推論コストを抑えつつ精度を維持しやすい設計とみられる。

話者識別については、Sortformerによる話者の手がかりを音響特徴と一緒に言語モデルへ渡す。生成の途中で各発話に話者タグを付けられるため、後段の処理だけで話者を割り当てる方式とは異なる。重なり合う発話の多い古いコメディ映画の一場面を題材に、字幕と話者ラベルを付けるデモも示されている。

提供方法としては、公開済みのチェックポイントをvLLMで本日から配信できる。量子化版と、ローカル展開向けのNeMo-Speech.cppは近日公開とされ、RTX Spark、DGX Spark、Jetson AGX Thorといった手元のGPU、あるいはBlackwell世代のデータセンターGPUで動かす道筋が示されている。

ベンチマークでの位置づけ

Hugging Face Open ASR Leaderboardでは、英語でオープンウェイトモデル中1位となる平均WER 5.33%を記録した。多言語は7言語平均で4.62%、長尺音声は平均10.98%で、いずれもモデルカード内の比較でオープンウェイトモデル中最も低い数値とされている。

Artificial Analysisの音声認識リーダーボードでは、独自指標のAA-WERで2.8%を記録し、オープンウェイトモデル中最上位に同率で並んだ。記事は、同率の相手が24Bの活性パラメータを持つ一方、本モデルは約4Bである点を強調している。音声エージェント向けの評価セットAA-AgentTalkでは1.8%のWERで、次点のオープンウェイトモデルは2.3%だった。

話者識別では、David AIの21言語ダイアライゼーション部門で14システム中最低の誤り率18.26%を記録し、NVIDIAの専用モデルNemotron 3 Diarization(18.38%)をわずかに上回った。VoiceArenaの英語フルセッション比較でも14システム中1位で、cpWERは32.4%、単語の欠落は参照語の8.32%と、中央値の約31%を大きく下回っている。

Granary v2とファインチューニング

同時公開されたGranary v2は、Nemotron 3.5 Transcribeの学習に使われた音声データを整えるパイプラインで、NVIDIA NeMo Curatorで構築されている。公開マニフェストは48言語・16のソースコーパスにわたり46万3,062時間を収録し、Granary v1の25言語から拡大した。記事は、この数字がデータセット公開の説明であり、モデルの学習全体の混合比率やサンプリング重みを示すものではないと注記している。

パイプラインは音声の前処理、ASR、タスクラベルの生成、高品質データの選別という4段階で構成される。1つの録音に対して3種類の表記(逐語的や整形済みなど)を生成し、これはプロンプトで要求できる形式と対応する。加えて短い音声キャプション、借用語の復元、音声に基づくQ&Aペア、ASR用のバイアス用語、自動品質スコア付きの翻訳も生成する。

適応の効果は医療分野の事例で示されている。インドの医師・医学生の録音3,619クリップからなるEka Careの公開ベンチマークで、言語と文字体系を明示したプロンプトによりWERは30.8%から23.8%に下がり、代表的な音声と正解表記を組にしたファインチューニングで11.8%まで低下した。記事では素のモデルと比べて約62%の誤り削減と説明され、別途、未知話者でのWERが最良プロンプト比で45.8%相対改善したとも述べられている。

現時点の制約と注意点

記事が明記している制約は、本モデルが録音済み音声向けであり、ライブストリーミングには対応しないという点である。リアルタイムの会議や通話にそのまま差し込む用途は想定されておらず、処理は録音後に行う形になる。また音声への質問応答は英語で学習されており、言語対応はタスクごとに異なる。

精度面では、固有名詞、話者の切り替わり、質問応答の内容を録音と突き合わせて確認すべきだと記事は注意を促している。量子化版とNeMo-Speech.cppは「近日」とされ、現時点で手元環境での実行手順は公開済みの範囲に限られる。Granary v2の音声データはマニフェストに含まれず、各コーパスの元ライセンスに従って別途ダウンロードする必要がある。

Nemotron 3.5 Transcribeの主要ベンチマーク結果
ベンチマークスコア比較対象・順位
HF Open ASR(英語)平均WER 5.33%オープンウェイトモデル中1位
Artificial Analysis(AA-WER)2.8%オープンウェイトで同率1位(活性約4B)
AA-AgentTalk WER1.8%次点のオープンウェイトは2.3%
David AI DER(21言語)18.26%14システム中最低。Nemotron 3 Diarizationは18.38%
VoiceArena cpWER32.4%14システム中1位
原文からの引用
In benchmarking, Transcribe processed 100 hours of audio in under three minutes on one NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition GPU, using the forthcoming NVFP4 quantized version.

ベンチマークでは、Transcribeは近日公開のNVFP4量子化版を用いて、NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition GPU 1枚で100時間の音声を3分未満で処理した。

今後の見通し

次に判断材料になるのは、量子化版とNeMo-Speech.cppの実際の公開時期と、手元GPUでの速度・精度のバランスである。記事ではNVFP4量子化版を使い、RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition 1枚で100時間の音声を3分未満で処理したとされるが、これは30秒クリップを高い同時実行数で流した条件での測定であり、実運用の会議音声にどこまで当てはまるかは別途検証が要る。日本語を含む各言語の個別スコアやライセンス条項も、公開資料が揃えば判断しやすくなる。

日本の開発者・IT企業にとっての意味

日本のIT企業にとっては、議事録作成やコールセンターの通話分析、医療・法務などの専門用語が多い音声処理を、外部APIに音声を送らずに自社環境で完結させられる選択肢が増えることを意味する。オープンウェイトであるため、機密性の高い録音を扱う案件でも構成を検討しやすい。さらにGranary v2とファインチューニング手順が公開されたことで、業界用語や表記ルールをプロンプトで指定し、足りない部分を追加学習で補うという段階的な作り込みが現実的になった。一方でライブストリーミング非対応という制約は、リアルタイム字幕や音声エージェントへの直接適用が難しいことを示す。日本語の精度と量子化版の実効速度を確認したうえで、バッチ処理の文字起こし基盤として評価を始めるのが現実的とみられる。

気になる点

日本語の文字起こしもできるのか
文字起こしの対応言語は40言語とされ、その中に含まれる可能性はあるが、記事には言語の一覧も日本語の個別スコアも示されていない。翻訳は31言語、話者識別は13言語で、タスクごとに言語対応が異なると明記されているため、日本語での実力は公開資料で確認する必要がある。
自社サーバーや手元のGPUで動かせるのか
オープンウェイトモデルとしてHugging FaceとModelScopeで公開されており、vLLMでの配信はすでに可能とされている。量子化版とローカル展開向けのNeMo-Speech.cppは近日公開とされる。利用条件はリリースに示された公開条件に従う必要がある。
リアルタイムの会議音声に使えるか
記事は録音済み音声向けと明記しており、ライブストリーミングには対応しない。対象は最長1時間・最大8話者の録音で、会議後のバッチ処理や録画データの文字起こしに向く。リアルタイム用途には別の構成が必要になる。

用語解説

WER(単語誤り率)
文字起こし結果を正解と比べ、置換・挿入・削除の誤りを単語単位で数えた割合。低いほど精度が高い。
話者ダイアライゼーション
音声の中で誰がいつ話したかを区別する処理。話者ラベル付きの文字起こしを作る際に必要になる。
DER(ダイアライゼーション誤り率)
話者の発話時間の割り当てを正解と比較した誤り率。話者識別の精度指標として使われる。
cpWER
話者ラベルを対応付けたうえで単語誤りを数える指標。複数話者の文字起こし精度をまとめて評価できる。
MoE(混合エキスパート)
複数の専門家ネットワークを用意し、入力ごとに一部だけを使う構造。総パラメータを増やしつつ計算量を抑えられる。
NVFP4
NVIDIAが用いる4ビット精度の量子化形式。モデルを小さく高速に動かすための圧縮手法の一つ。

出典

NVIDIA Nemotron 3.5 Transcribe and Granary v2: Intelligent Multilingual Transcription You Can Prompt and Adapt

Hugging Face / 2026年10月28日

https://huggingface.co/blog/nvidia/nemotron-transcribe-granary

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