
- Geminiの業務利用は協働が中心で、大量自動化の証拠は確認されず
- AIが実際に使われている業務タスクは全体の21%に留まる
- 利用の大半は専門性の低い認知タスクで、仕事の代替ではない
研究の概要と結論
生成AIが労働市場に与える影響を実データで検証した研究を、Google Researchが発表した。米国労働省の職業分類とO*NETのタスクデータに基づき、GeminiアプリやAI Mode、Gemini APIでの業務関連利用を自動分類した。
その結果、Geminiは多くの職業で使用されているものの、その活用は「浅く、圧倒的に協力的な性質」で、一連のタスク全体を自動化する用途は限定的だとしている。研究者らは「AIがホワイトカラーの仕事に大規模な自動化と失業をもたらすという主張を裏付ける証拠は見つからなかった」と述べている。
利用は一部のタスクに集中
解析では、O*NETの個々の作業単位に照らして「25回以上の利用がある」タスクを「Geminiタスク」と定義。全タスクのうち21%だけがこの基準を満たした。
職業別では、29%の職業で該当するタスクが一つもなく、30%の職業では対象タスクの4分の1未満にとどまった。逆に、業務の4分の3以上で定常的に利用されている職業は全体の3%に過ぎず、ソフトウェア品質保証や人事、文書管理などが該当する。
職業別の利用量は、コンピューター、金融、芸術・娯楽などのホワイトカラーで過大評価される一方、販売、運輸、飲食サービスなどでは大幅に少なかった。
認知タスクでも専門性は低め
利用されたタスクのうち、認知的な業務が体積ベースで86%を占めた。ただし、頻繁に使われた認知タスクは「アイデアの下書きや生成」「情報検索や学習」が中心で、自動化に直結するものは少数。しかも、記述の複雑さで測った専門性が低いタスクに集中していた。
たとえば、別言語への書き換えや製品仕様書の作成・レビューといった、高度な専門知識を要しない作業で利用が過大評価されていた。一方、工業機械の整備士が試験結果の解析や機械エラーコードの解読に使うなど、ブルーカラーの現場でも補助的に活用されている。
利用方法にも特徴があり、ブルーカラーの作業者はテキストよりも写真を添付してGeminiに相談する傾向が強かった。
AI脅威論との隔たり
今回の結果は、AIが近い将来に人間の能力を上回り、多くの仕事を代替するという見方とは一線を画す。論文では、AIは現在「既存の仕事を補完する役割」が中心で、「職業内の一部タスクに有用だが、人間が行う仕事を包括的に実行する状況にはない」と結論づけている。
研究者は、今後のAIの進歩で状況が変わる可能性にも言及するが、人間とAIの協働が続く可能性もあるとしている。データはむしろ「非定型の仕事における人間のスキルの重要性が高まる」ことを示唆しているという。
研究の限界と今後
この調査はGeminiアプリやAI Mode、Gemini APIでの約1500万件の対話を対象としており、他のAIサービスの動向は含まれない。また、自動分類器による推定には不確実性が伴うため、人手による検証も行われたが、あくまで一定の条件下での結果である。
現時点では、AIが労働市場全体に与える影響を判断するには限界があると言える。研究者自身も「新たなAIのブレークスルーが起これば、状況は変わるかもしれない」としている。
AI appears useful for a subset of tasks performed within occupations, but they do not currently appear to be comprehensively used for performing the work currently done by humans.
AIは職業内で行われる一連のタスクの一部には有用だが、現在人間が行っている仕事を包括的に実行するために使われているわけではない。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
日本のIT企業にとって、この調査はAI導入を巡る戦略を見直す材料になる。現在のAIは、人間の仕事を丸ごと代行できる段階ではなく、特定タスクの補助や自動化に適している。そのため、業務プロセスを設計する際には、AIが担う部分と人間が担う部分を明確に切り分け、AIの出力を人間が検証しながら進める「協働」の仕組みが重要になりそうだ。また、AI関連サービスを開発・販売する企業に対し、過度な自動化効果を謳うのではなく、具体的なタスクレベルでの生産性向上を訴求する方が、実際のニーズに合うことを示唆している。一方で、高専門性タスクへのAI活用は今後進む可能性があるため、採用や人材育成では「AIを使いこなす人材」と「非定型業務に強い人材」の両方を育てる視点が必要になる。
用語解説
- O*NET
- 米国労働省が提供する職業情報データベース。職業ごとに必要な知識や仕事内容を細かなタスク単位で定義している。
- タスク
- 仕事を構成する個々の作業単位。この調査では、O*NETのタスクを基準にAI利用の有無を判定している。
出典
Despite AI hype, Google's data shows workers aren't automating themselves away
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