- Claude MythosがHAWKと低ラウンドAESの数学的弱点を発見
- 結果は現行システムに実用的影響なしと明記
- 60時間の実行でAPI費用は約10万ドルと推定
何が起きたか
Simon Willison氏のブログ記事で、Anthropicの研究者らがClaude MythosというAIモデルを用いて暗号解析を行った結果が紹介された。対象となったのは、暗号方式HAWKと、ラウンド数を減らしたAES(弱体化版AES)である。
ブログでは「これらの結果はいずれも今日のコンピュータシステムに対して実用的な影響を持たない」と引用されている。あくまで研究上の発見として位置づけられており、直ちに既存システムの脆弱性を意味するわけではない。
人間の介入とコスト
ブログでは、研究で使われたプロンプトの一部が公開されている。そこには「モデルは解決不可能だと思ってしまい挑戦しないため、十分なプロンプトが必要だ」といった記録や、「出版に値する何かを見つけよう」という指示が含まれていた。
スペルミスを含んだ生のプロンプトが共有されており、AI研究における試行錯誤の過程がうかがえる。Claude Mythosのプレビュー版は合計60時間稼働し、推定API費用は約10万ドルに達したという。
主な人間の介入は、モデルが諦めないように励まし、「出版に値するものを見つける」ように促すことだったとされる。
CryptanalysisBench
この研究の一環として、新しい評価ベンチマークを紹介する論文「CryptanalysisBench: Can LLMs do Cryptanalysis?」が発表された。ETH Zurich、Tel Aviv University、University of Haifaとの共同研究とされている。
このベンチマークは、LLMが暗号解析をどこまで実行できるかを測ることを目的としている。今回の発見が既存の暗号に実用的リスクを与えないとしても、AIの研究支援ツールとしての可能性を示すものだ。
注意点と議論
今回の発見は「数学的弱点」とされているが、現行のシステムに実用的な影響はないと明記されている。暗号方式の安全性は、理論的な解析と実用的な攻撃手段の距離を慎重に見極める必要がある。
また、Claude Mythosが具体的にどのようなモデルなのかは、このブログ記事だけでは不明である。約10万ドルのAPI費用は、研究に大規模な計算リソースが必要だったことを示唆しているが、AIの進化によってこうした作業の敷居が下がる可能性もある。
AIによる自動化された暗号解析が進む一方で、その結果の解釈や検証には、人間の専門家による分析が依然として重要だと考えられる。
the models tend to think it is impossible to solve so they don't try they need a good amount of prompting.
モデルたちは解決不可能だと思って挑戦しないため、十分なプロンプトを与える必要がある。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
今回の成果は、AIモデルが暗号解析のような高度な数学的推論を伴う研究タスクを支援できる可能性を示している。日本企業にとっては、暗号やセキュリティ製品の開発現場で、LLMを脆弱性分析の補助ツールとして活用する際の参考事例となる。一方で、約10万ドルというAPI費用は現時点では専門的な研究用途向けであり、一般の開発プロジェクトにすぐ応用できるものではない。今後、評価ベンチマーク「CryptanalysisBench」が整備されることで、LLMの暗号解析能力を定量的に比較する土台ができるとみられる。
用語解説
- Claude Mythos
- Anthropicが開発したAIモデル。この記事では暗号解析に用いられた。
- HAWK
- 暗号方式の一つ。記事では詳細な仕様は説明されていない。
- AES
- 共通鍵暗号方式の一つ。今回の研究ではラウンド数を減らした弱体化版が対象。
- CryptanalysisBench
- LLMの暗号解析能力を評価するためのベンチマーク。
出典
Discovering cryptographic weaknesses with Claude
https://simonwillison.net/2026/Jul/28/discovering-cryptographic-weaknesses-with-claude
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