
- 64B/16B/4Bの3サイズで提供され、エッジから大規模まで対応
- オープンライセンスで公開され、企業が自社データで追加学習可能
- ロボットや自動運転、視覚AIの各領域で採用が拡大中
「Cosmos 3」発表の概要
NVIDIAは2026年8月6日、物理AI向けのオープンな基盤モデル群「Cosmos 3」を公開した。物理AIとは、ロボットや自動運転車など、現実世界で物理的な行動を伴うAIシステムを指す。Cosmos 3は、世界モデルを中心に、画像や動画の理解、将来の状態の予測、行動の生成を1つのモデル群で扱えるように設計されている。
モデル構成は、高精細な世界モデリング向けの「Super (64B)」、効率的な推論と追加学習向けの「Nano (16B)」、エッジ端末向けの「Edge (4B)」の3種類だ。Edge版はNVIDIA RTX GPU、DGXシステム、Jetson ThorなどのエッジGPUで動作する。また、Cosmos 3は混合トランスフォーマー(Mixture-of-Transformers)アーキテクチャを採用しており、視覚推論、世界生成、行動予測を1つのモデルファミリーで統合している。
世界モデルがもたらす変革
世界モデルは、物理環境の振る舞いを学習し、次の状態や適切な行動を予測するモデルだ。従来のAIは見た目の認識に重点を置くことが多かったが、物理AIでは結果の予測や因果関係の理解が求められる。世界モデルを使うことで、まれなイベントや長い尾(ロングテール)の状況を安全に繰り返し再現できるようになる。
データ収集は物理AIの開発で大きな障壁となるが、Cosmos 3のようなオープンな世界モデルは、合成データの生成やシミュレーションに活用できる。さらに、Linux Foundationの「OpenMDW 1.1」ライセンスで提供され、モデルを自社データで追加学習できる。このオープン性が、特定のロボットやセンサー構成に適応するための実務上の要件になり得る。
加えて、NVIDIA OmniverseライブラリとOpenUSDを組み合わせれば、シミュレーション用の3D環境を構築しやすくなる。これにより、資産やセンサー構成、環境条件が変わるたびに発生する重複作業を減らせる。
ベンチマークと採用状況
NVIDIAによると、Cosmos 3は複数のベンチマークで首位を獲得している。オープンウェイトのテキストから画像・動画生成では「Artificial Analysis」で、世界生成では「PAI-Bench」、画像から動画の物理一貫性では「Physics-IQ」で1位となった。ロボット政策では「RoboLab」、視覚理解では「VANTAGE-Bench」で最高評価を得ている。
採用企業も広がっている。ロボティクスではDoosan Robotics、LG Electronics、Samsung Electronics、Skild AI、自動運転ではLi Auto、Xiaomi、Afari、視覚AIではCentific、Fogsphere、Linker Vision、Milestone Systems、Yuanなどが名前を連ねる。これらの企業は、それぞれの領域でCosmos 3を活用した物理AIソリューションを開発している。
日本拡大と今後の論点
NVIDIAは世界モデルの構築者やAI開発者が参加する「Cosmos Coalition」を日本にも拡大した。日本のロボット・製造業のリーダーが参画し、工場、物流、農業、建設、医療、交通向けのオープンな世界モデルを開発する予定だ。日本はロボット大国であり、実環境の多様性に対応できる世界モデルへの期待は大きい。
一方で、ベンチマークの評価はあくまでNVIDIA自身の報告に基づいており、第三者による検証は今後の課題となる。また、モデルのライセンスはオープンだが、基盤となるGPUやソフトウェア環境を含めた運用コストや、追加学習のための専門知識が必要になる点には注意が必要だ。
Open models, which anyone can download, inspect, modify and run on their own infrastructure, are what make that possible.
誰でもダウンロードし、検査し、変更し、自社インフラで実行できるオープンモデルは、そうした生態系を可能にする。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
日本のIT企業や製造業にとって、Cosmos 3のオープンウェイト公開は、物理AI開発の参入障壁を下げる意味を持つ。これまでは、ロボットや自動運転に特化した基盤モデルを自前で開発するか、ブラックボックスなAPIを利用するしかなかった。Cosmos 3なら、自社のデータで追加学習し、特定の工場や物流現場に合わせたモデルを構築できる。また、Edge版を使えば、Jetson搭載の産業用デバイス上で推論処理を行い、クラウド依存を避けることも可能だ。Cosmos Coalitionの日本参入により、国内のロボットメーカーやシステムインテグレーターが参加し、共通基盤としての世界モデルが育つかどうかが注目される。ただし、モデルの性能や安全性を自社のユースケースでどう検証するかは、各企業の責任となる。
用語解説
- 世界モデル
- 環境の物理的な振る舞いを学習し、未来の状態や適切な行動を予測するAIモデル。シミュレーションやデータ生成に使われる。
- Physical AI
- ロボットや自動運転車など、実世界で物理的な行動を伴うAIシステム。認識だけでなく、予測や制御も求められる。
- 混合トランスフォーマー
- 複数のトランスフォーマーネットワークを組み合わせ、タスクに応じて動的に切り替えるアーキテクチャ。効率と性能の両立を狙う。
- OpenUSD
- 3Dシーンを記述するためのオープンなフレームワーク。複数ツール間で複雑な3Dデータを共有・合成できる。
- OpenMDW
- Linux Foundationが管理するオープンなモデル重みのライセンス。ダウンロード・改変・再配布が認められる。
出典
Into the Omniverse: How Open World Models Push the Frontier of Physical AI
AI導入も顧問も、お任せください
何から手をつけるか、どこまでAIに任せるか。自社の業務に合わせて整理し、導入から運用まで伴走します。相談だけでも構いません。
AI導入について相談する