
- xAIを児童性的虐待画像(CSAM)の訓練使用で告発する初の集団訴訟が提起された
- Grokの利用規約ではXの投稿とGrok自身の出力がデフォルトで訓練データに含まれる
- 原告はCSAMの生成停止と全データ削除を求め、被害者の集団代表として訴訟に参加
集団訴訟の内容
原告Jane Doeは、幼少期に虐待された画像がAI生成CSAMに悪用されたとして、xAIを集団訴訟で訴えた。彼女の画像はNCMECとCCCPによってハッシュ化され、被害者通知システムに登録されていた。CCCPがxAIのサービス上に彼女を描いたAI生成CSAMを発見し、本人に通知したことで事態が明らかになった。
訴状は、xAIがGrokの画像・動画生成能力を構築するために使用したデータセットに、NCMECのCSAMハッシュリストに含まれる原告の画像が含まれていたと主張している。ただし、具体的なデータセットの詳細には踏み込んでいない。原告は、xAIがGrokを訓練する際、初期の虐待画像に加え、生成されたAI画像も追加で学習させた可能性があると懸念している。
訓練データの仕組み
問題の核心は、Grokの利用規約が公開X投稿とGrok自身の出力をデフォルトで訓練データに含める点にある。この仕組みでは、誰かが画像を公開すると、それがそのままxAIの訓練パイプラインに流入する。原告は、暴力的コンテンツはフィルターで除外される一方、CSAMや非同意の性的画像(NCII)、NSFWが除外カテゴリに含まれるか不明だと指摘する。
さらに、訓練済みモデルから特定の画像の影響を完全に除去することは技術的に難しく、xAIが公開データを削除しても、モデルへの影響は残り続ける可能性がある。訴状は、この点を踏まえて、削除前に学習されたCSAMがモデルの出力を形成し続けると批判している。
訴訟の法的根拠
この訴訟は、米国の連邦児童ポルノ法と「Masha's Law」に基づく。これらの法律は、CSAMの被害者に、生産・所持・頒布に関する損害賠償請求権を与える。原告の弁護士は、xAIが「生産・所持・頒布」のすべてを行ったと主張している。
xAIがCSAMを訓練に使用したと告発されたのはこれが初めて。過去に論争となったデータセットがCSAMを含むとして削除された例はあるが、xAIがそのデータを使った証拠は示されていない。現時点では訴状の主張段階にあり、裁判所が事実認定を行う必要がある。
残る論点
訴状は、xAIがGrokの出力を保存し、それを再学習に使っていると疑っているが、その実態は未確認だ。xAI側はコメントを出しておらず、どのように応答するかは不明。今後の手続きで、訓練データの中身が明らかになるかが焦点となる。
この訴訟にはマスク氏自身も関わる。マスク氏がNSFW画像を宣伝していたことを踏まえ、原告はGrokが性的な出力をすべて拒否するよう求めている。これがAIサービスの表現の自由度にも影響を与える可能性がある。
| コンテンツ種別 | 訓練データからの除外指定 |
|---|---|
| 暴力的コンテンツ | 除外されると明示 |
| CSAM・NCII・NSFW | 言及がなく不明 |
xAI must be held responsible for knowingly training its models on images of the horrific abuse she suffered, and on the abuse images of every other survivor in this class.
xAIは、彼女が受けた恐ろしい虐待を写した画像や、このクラスに属するすべての生存者の虐待画像を故意にモデル訓練に使用した責任を負わなければならない。
今後の見通し
今回の訴訟は、AIモデルの学習データに違法コンテンツが紛れ込んだ場合の責任を問う先例となる可能性がある。今後、裁判所が集団訴訟の認定や、xAIに対する訓練データ開示命令を出すかが焦点となる。また、xAIが利用規約を変更してCSAM等を明示的に除外対象とするか、あるいは実質的な対策を取るかが注目される。裁判での事実解明が進めば、同様のデータ利用を行う他のAI企業にも影響が及ぶとみられる。日本企業もモデル提供者のデータポリシーを改めて確認する必要が生じるだろう。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
日本のIT企業にとって、この訴訟はAIモデルの学習データを外部に依存する際のリスクを浮き彫りにしている。Grok APIを利用したり、Xのデータを活用する場合、利用規約上、ユーザー投稿が訓練データに含まれる可能性がある。日本の法律でも児童ポルノ禁止法により、CSAMの生産・所持・提供は厳しく罰せられる。企業はモデルの出力やデータソースに違法コンテンツが混入していないか監査し、必要に応じてフィルタリングや利用停止などの措置を検討すべきだ。また、AI規制が進む中で、訓練データの透明性を求める声が強まれば、日本企業が海外モデルを利用する際の契約条件も厳格化される可能性がある。
気になる点
- Grokの利用規約に基づき、日本のユーザーの投稿も訓練データに使われるのか?
- 原文では、Grokの利用規約は公開されたX投稿とGrok自身の出力をデフォルトで訓練データにすると定めている。日本のユーザーもXの利用規約に同意すれば同じ扱いになるとみられるが、地域ごとの特例があるかは公表されていない。必ず最新の規約を確認する必要がある。
- xAIは今回の訴訟にどう対応するのか?
- 原稿執筆時点で、XはArs Technicaのコメント要請に応じていない。訴訟はまだ訴状の提出段階であり、xAIの正式な答弁や対応は明らかになっていない。今後の法廷での主張や、xAIが自主的に訓練データを精査するかどうかが注目される。
用語解説
- CSAM
- 児童性的虐待画像。子どもが性虐待されている様子を写した違法な画像・動画。
- NCMEC
- 全米行方不明・搾取児童センター。米国の非営利団体で、CSAMの通報受付やハッシュリスト管理を担う。
- ハッシュリスト
- 画像のデジタル指紋(ハッシュ値)を集めたリスト。既知のCSAMを自動検出するために使われる。
- NCII
- 非同意性的亲密图像。同意なく撮影・公開された性的な画像を指す。
- NSFW
- Not Safe For Workの略。職場など公共の場で閲覧するのに不適切な性的・過激なコンテンツを指す。
出典
Elon Musk’s xAI used child porn to train Grok models, lawsuit says
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