
- TTPが今年332件のAI生成CSAM広告を検出。大半が中国製ヌード化アプリ
- 実在の女児の写真を無断使用し、AIで性的な動画に加工する手口が判明
- Metaの削除は数日遅れ、同じ内容でも対応が分かれる不統一が露呈
調査が明らかにした実態
Tech Transparency Project(TTP)は9月8日、Metaのプラットフォーム上で今年に入り332件のCSAM広告を検出したと発表した。その大半は中国製のAIアプリ、とりわけ実在の人物の写真からヌード画像を生成する「ヌード化」アプリを宣伝するものだった。対象は圧倒的に10代前後の女児で、一般の写真が無断で性的な加工に使われている。
TTPは、実在する被害者に結びつく事例も確認した。欧州の王室に所属する少女の写真を性的な動画に加工したケースや、14歳のインスタグラムインフルエンサーがユニフォーム姿で写った写真を用いた広告などが挙げられている。別のストック写真では、ピンクのスポーツウェアを着た女児が成人男性に虐待される動画に加工されており、広告の一部は『本物のAI』をうたう文言でクリックを促していた。
Metaの対応の遅れと矛盾
TTPが300件超の広告を報告したところ、Metaは約半数を数時間で削除した一方、残りは削除に数日かかったという。しかも、報告時点では児童搾取ポリシー違反として記録されず、TTPが指摘してから記録を修正する例もあった。ある広告は報告後もインプレッションが4回から330回に増加しており、TTPは被害の過小計上の可能性を懸念する。
Metaは「ヌード化アプリや児童搾取は容認しない」と説明し、一部の広告は「短い場面やぼやけた映像のため検出をすり抜けた」とする。ただ、同じ画像と文章を使った広告が一方は削除され、他方は「広告基準に抵触しない」として残るなど、審査の一貫性にも疑問が示されている。
収益構造と規制の動き
TTPの報告では、中国の広告リセラーであるGIMC、Meetsocial、BlueFocusの3社が、同じCSAM内容を含む広告をMetaのプラットフォームに配信していた。また、実在しない事業者ページや教会を装うページなど、明らかに不自然なアカウントから出稿されたケースもあった。Metaが中国市場から締め出されている以上、現地のリセラー経由の収益は無視できないという事情があるとみられる。
今回の広告は、EUで2万9000人以上、英国で6800人に表示された。約8割は米国で配信され、オーストラリアにも一部届いたという。こうした状況を受け、ミシガン州とフロリダ州の司法長官が調査に乗り出し、上院議員のマーク・ワーナー氏はMetaに説明を求める書簡を送付した。オーストラリアのeSafety規制当局も上級レベルでの情報提供を要求している。
広告審査の課題と説明
Metaは広告審査の新システムを導入済みだとしていたが、TTPは8月に53件の広告を報告した後、Metaが新しい検出技術を誇ったにもかかわらず、数百件の新規CSAM広告が確認されたとしている。Metaは、該当広告の平均インプレッションが200未満で、総広告費が5000ドル未満だった点を挙げ、影響を限定的に説明しようとした。
一方、TTPは検出漏れが収益の過小申告につながる可能性を指摘する。AI技術の進展により、子どもが日々の写真を撮られるだけで性的なコンテンツに変換されるリスクが生じており、プラットフォーム側の対策は待ったなしだ。今回の問題は広告審査だけでなく、AI生成画像への社会的な対処が急務であることを改めて示している。
| 項目 | Metaの説明 | TTPの指摘 |
|---|---|---|
| 検出体制 | 新しいシステムを導入済み | 数百件の新規CSAM広告が依然掲載 |
| 広告の規模 | 平均200未満・総額5,000ドル未満 | EUで29,000人超に表示 |
| 削除対応 | すべての広告を審査 | 同一広告でも対応が不統一 |
If Meta's ad approval process can't detect and reject such obviously horrific content before it is shown to Facebook and Instagram users, then Meta's whole ad review system should be called into question,
Metaの広告承認プロセスが、FacebookやInstagramのユーザーに表示される前に、これほど明白なひどい内容を検出して拒否できないとすれば、広告審査システム全体が疑われるべきだ。
今後の見通し
今回の問題は、Metaが書簡への回答や規制当局の要請にどう応じるかで、次の段階に進むとみられる。特に、米国の州司法長官やオーストラリアの規制当局が公開する調査結果は、広告審査プロセスに対する強制力のある要件となる可能性がある。また、TTPやWiredによる継続的な監視が続く中で、Metaが検出システムの具体的な改善内容や誤検出の内訳を公表すれば、技術的な対応の妥当性を評価できる。AI生成画像の検出モデルが一般の広告審査にどこまで組み込まれるかが、今後の焦点になるだろう。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
日本のIT企業にとって、この問題は自社の広告配信やAIサービスに直接的に当てはまる。Metaの事例では、中国製アプリの広告が多数を占めており、クロスボーダーな広告在庫の監視の難しさが浮き彫りになった。日本国内でも、海外の広告ネットワークを通じて不適切な広告が入り込む可能性は否定できない。特に、生成AIを活用したサービスを提供する企業は、ユーザーが実在の人物の写真を入力してヌード画像を生成できる機能を持たせないようにするなど、利用規約と技術的対策の両面から悪用リスクに対応する必要がある。また、AI生成コンテンツの検出技術は進歩しているが、今回のように短い動画やぼやけた映像は審査をすり抜けるため、メタデータや出稿元の信用情報と組み合わせた多層的な審査が求められる。
気になる点
- この広告はどのようにしてMetaの審査をすり抜けたのですか?
- Metaは「子どもが短時間しか映らない、ぼやけた映像だったため検出できなかった」と説明している。また、TTPは中国の広告リセラー経由の配信や、偽のビジネスページを使った出稿が審査を回避する要因になった可能性を指摘している。
- 日本の企業が自社の広告配信で同様の問題を防ぐにはどうすればよいですか?
- 本記事では具体的な対策は示されていない。ただ、Metaの事例からは、AI生成画像の検出だけでなく、広告の出稿元が実在する企業なのかを確認する仕組みや、短時間の映像でも性虐待を検出できる専用モデルの導入が必要だと示唆される。
- AI生成のCSAMは法律上どのように扱われますか?
- 米国司法省は、AI生成のCSAMも実際の子どもを撮影した児童ポルノと同様に連邦法違反となり得ると明確にしている。TTPは今回の広告が連邦法に抵触する可能性が高いとみている。
用語解説
- CSAM
- 児童の性的虐待を写した画像や動画の総称。Child Sexual Abuse Materialの略で、日本の児童ポルノに近い概念。
- ヌード化(nudify)アプリ
- 実在の人物の写真から、AIを使って服を脱がせたヌード画像や動画を生成するアプリ。
- Tech Transparency Project
- 米国の非営利団体。大手テック企業の透明性や社会的影響を調査し、報告を公表している。
- 広告リセラー
- 広告主と配信プラットフォームの間に入り、広告の販売や運用を代行する事業者。
出典
“This is the AI men actually use”: Meta ads pushed apps nudifying real teens
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