- AgentCoreの実行環境でセッションが最長14日間継続し、専用EC2インスタンスを選択できる
- 行動の順序・レート・支出をインフラ側で制御するポリシーや決済の仕組みを追加
- エージェントやMCPサーバーを検索・再利用できるAWS Agent Registryを提供
8月の更新が示す方向性
AWSは2026年9月9日に公開したブログで、2026年8月にAmazon Bedrock、AgentCore、Strands関連で提供した更新をまとめて振り返った。Amazon Bedrockは22万5,000以上のアクティブ顧客が利用し、Fortune 100企業の8割超が使っていると説明されている。エージェント型アプリの広がりを受け、AgentCoreでは任意のフレームワークとモデルを使ってエージェントを構築・接続・最適化できる。Strands Agent Harness SDKはオープンソースとして公開され、エージェントを任意の場所にデプロイできる柔軟性を提供するとしている。
ブログは、注目がモデル単体の性能からその周辺のシステムに移っていると指摘する。どんなコンテキストにアクセスできるか、どんな操作を実行できるか、データがどこで処理されるか、意思決定とコストをどう統制するか、という4点である。エージェントが企業情報を推論し、長い時間軸で作業を続け、デジタルと物理の両方のシステムをまたいで行動する範囲が広がっていることが背景にある。8月の更新はこの方向に沿ったものだと位置づけている。
同じ8月にはモデル側の更新もあった。OpenAIのGPT-5.6 Sol、Terra、Lunaは100万トークンのコンテキストウィンドウとプロンプトキャッシュに対応し、Web検索と、25以上のAWSリージョンから利用できるクロスリージョン推論が加わった。本稿ではこのうち、エージェントを本番で動かすための基盤に焦点を当てて整理する。
最長14日のエージェント実行
AgentCoreの実行環境では、エージェントを専用のAmazon EC2コンピュート上で動かせる。GPU最適化、メモリ最適化、コンピュート最適化のインスタンスから用途に合わせて選べ、セッションは最長14日間継続する。数日にわたる調査やコーディング、監視といった作業をエージェントに任せられるようになる。ワークロードに必要な計算資源を割り当て、利用者やシステムに近い場所で実行できる点が狙いとされている。
提供リージョンも広がった。AgentCoreはUS West (N. California)とAsia Pacific (Hyderabad)に追加されている。ブログでは、エージェントが長い時間軸で生産性を保ちながら動き続けることが求められていると説明している。
行動・コンテキスト・支出の統制
Temporal policies は、エージェントがすでに行った操作を踏まえて次の操作を評価する仕組みである。呼び出しの順序や前提条件、承認ゲート、呼び出し間での値の一致、データの鮮度を強制できる。レート制限では、リクエスト数、推論トークン、同時接続数をユーザー単位またはグループ単位で制御する。AgentCore payments はAPIやMCPリソース、有料コンテンツへのアクセスと支払いを可能にし、インフラ側で強制される支出上限とエンドツーエンドの可観測性を備える。
コンテキストの扱いも強化された。AgentCoreのWeb Searchは、参照するドメインの指定や除外、公開日による絞り込みに対応し、承認済みの情報源から最新情報を取得できる。メモリ機能は会話だけでなく、アクティビティログや行動イベント、システムイベントなどの構造化JSONデータから長期記憶を抽出できるようになった。抽出した記憶は細粒度のアクセス制御でユーザー単位・テナント単位に分離できる。
コストの可視化も進んだ。IAMプリンシパル単位のコスト配分により、推論支出をユーザー、チーム、プロジェクト、アプリケーション、コストセンターに紐づけられる。AWS Cost Anomaly DetectionはAmazon Bedrock上のサードパーティ基盤モデルの支出を監視し、コストが急変したときに原因の内訳を示す。OpenAIはGPT-5.6ファミリーの値下げも発表している。
再利用と規制環境への対応
AWS Agent Registry は、エージェント、MCPサーバー、スキル、カスタムリソースを検索できる統制されたカタログである。接続されたAWSアカウントを横断して、AgentCore Runtime上のエージェントやAgentCore Gateway上のMCPサーバーを組織全体で検出できる。承認済みのリソースはAmazon Quickにも表示される。既存のものを再構築せずに再利用し、エージェントの乱立や重複開発を減らすことが狙いとされている。
規制対象のワークロード向けの提供も広がった。Claude Opus 5はAWS GovCloud (US)リージョンで、デフォルトでゼロデータ保持を有効にして利用できる。OpenAIのGPT-5.6 TerraとLunaもAWS GovCloud (US)リージョンで提供され、100万トークンのコンテキストウィンドウとプロンプトキャッシュに対応する。Amazon Nova Multimodal Embeddingsはテキスト、ドキュメント、画像、動画、音声をまたぐ検索をAWS GovCloud (US-West)に提供する。AgentCoreのメモリ、ポリシー、マネージドハーネスも加わり、商用リージョンに近い機能をGovCloudで使えるようになる。
現時点で分かっていないこと
ブログは機能の説明が中心で、料金体系や日本リージョンでの提供時期には触れていない。AgentCoreの追加リージョンとして挙げられているのはUS West (N. California)とAsia Pacific (Hyderabad)のみで、東京リージョンに関する記載はない。クロスリージョン推論は25以上のAWSリージョンからGPT-5.6を利用できるとしているが、対象リージョンの一覧は示されていない。
セキュリティ向けのDaybreak RedとDaybreak Blueは「対象となる顧客」向けの提供であり、誰でもすぐに使えるわけではない。また、ブログに示されている数値は利用顧客数やセッションの最大期間などに限られ、性能やコスト削減率を示す具体的なデータは含まれていない。導入を検討する際は、自組織が使えるリージョン、利用資格、料金を個別に確認する必要がある。
Together, these updates let you give agents more independence while controlling what can happen, in what order, at what rate, and within what budget.
これらのアップデートにより、何が、どの順序で、どの頻度で、どの予算内で起きるかを制御しながら、エージェントにより大きな自律性を与えられるようになります。
今後の見通し
今後は、AgentCoreの統制機能がどこまで細かく設定できるようになるか、料金体系や提供リージョンがどう広がるかが焦点になるとみられる。エージェントが数日単位で動き続ける前提の設計では、支出上限や承認ゲートが実務でどこまで機能するかが導入判断を左右する。日本国内のリージョンでの提供時期や、Agent Registryによる組織横断の検出が対象とするアカウントの範囲が明らかになれば、適用可否を判断しやすくなる。レート制限やポリシーの設定項目が増えれば、社内の承認フローや予算管理との突き合わせ方も変わってくる可能性がある。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
日本のIT企業にとっての意味は、エージェントを「試す」段階から「業務に任せる」段階へ移すための部品が揃ってきたことにある。最長14日のセッションは、これまでバッチ処理や人手でつないでいた調査・監視・コード修正の流れを、単一のエージェント実行にまとめられる可能性を示す。順序や前提条件を強制するポリシー、レート制限、支出上限は、社内の承認フローや予算管理と結びつけやすい。IAMプリンシパル単位のコスト配分とAWS Cost Anomaly Detectionは、複数チームでAmazon Bedrockを使う企業のコスト管理に直接関わる。Agent Registryは、部門ごとに作られたエージェントやMCPサーバーの重複を減らす手段になり得る。ただし提供リージョンと利用資格は原文では限定されており、導入前に確認が必要である。
気になる点
- 東京リージョンでもAgentCoreの新機能は使えますか。
- 原文でAgentCoreの追加先として挙げられているのはUS West (N. California)とAsia Pacific (Hyderabad)で、東京リージョンに関する記載はありません。クロスリージョン推論は25以上のAWSリージョンからGPT-5.6を利用できるとされていますが、対象リージョンの一覧は示されていません。国内での利用可否は現時点で公表されていないため、個別の確認が必要です。
- AgentCoreやAgent Registryの利用に追加料金はかかりますか。
- 原文にはAgentCoreやAgent Registryの料金に関する記載はありません。一方で、AgentCore payments はインフラ側で強制される支出上限を持つとされ、IAMプリンシパル単位のコスト配分やAWS Cost Anomaly Detectionによる支出監視も提供されます。GPT-5.6ファミリーについては値下げが発表されていますが、具体的な金額は明らかにされていません。
- 既存のエージェント実装を移行する必要はありますか。
- AgentCoreは「任意のフレームワークとモデル」を使ってエージェントを構築・接続・最適化できると説明されており、Strands Agent Harness SDKもオープンソースでデプロイ先を選べるとされています。ただし、既存実装からの移行手順や互換性、必要なコード変更の範囲については原文に記載がありません。まずは検証環境での確認が必要と考えられます。
用語解説
- Amazon Bedrock
- AWSの生成AI基盤サービス。複数の提供元のモデルをAPI経由で利用でき、エージェント構築やガードレールなどの機能を備える。
- AgentCore
- Amazon Bedrock上でエージェントを構築・接続・最適化するための機能群。実行環境、メモリ、ポリシー、ゲートウェイなどを含む。
- AIエージェント
- 指示や目標に沿って複数のステップを自律的に実行するAIシステム。外部ツールやAPIを呼び出して作業を進める。
- MCP(Model Context Protocol)
- AIモデルやエージェントが外部のツールやデータソースに接続するための標準プロトコル。
- プロンプトキャッシュ
- 同じ入力の処理結果を再利用し、推論のコストとレイテンシを抑える仕組み。
- クロスリージョン推論
- 複数のAWSリージョンにまたがって推論処理を振り分ける仕組み。容量の確保や、データ処理の地理的な条件の調整に使う。
出典
ICYMI: What landed for AI builders in August 2026
https://aws.amazon.com/blogs/machine-learning/icymi-what-landed-for-ai-builders-in-august-2026
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