
- 総パラメータ763B。入力処理(prefill)に8B、出力生成(decode)に16Bのアクティブパラメータを使う構成
- MITライセンスのオープンウェイトで、1Mトークンのコンテキストとテキスト・画像入力に対応
- API価格は入力100万トークンあたり$0.30、出力$1.20。KVキャッシュはV4 Flash比で最大8分の1
何が発表されたのか
DeepSeekが新しいオープンウェイトモデル「DeepSeek v4.1-Flash」を公開しました。総パラメータ数は763Bで、これまでの表記に倣うと「763B-P8B-D16B」と表現される構成です。MITライセンスで公開され、1Mトークンのコンテキストとテキスト・画像の入力に対応します。
名称はv4.1ですが、中身は大きな作り直しだと見られています。機械学習研究者のSebastian Raschka氏は「大規模な刷新であり、DeepSeek V5と呼ぶべきだった」と評し、エンコーダ・デコーダ構成を従来世代からの主要な変更点として挙げています。
提供面では、DeepSeek純正APIに加えてBasetenが初日から対応し、OllamaもMax/Teamアカウント向けに順次展開を始め、その後Proプランの利用者にも広げています。記事では、V4 Pro 0813を退役させて新しいアーキテクチャへ全面移行する流れだと説明されています。
新アーキテクチャの中身
最大の技術的な特徴は、因果的(causal)なエンコーダ・デコーダ構成を採用した点です。これまでのDeepSeekのモデルとは異なり、入力の読み込み(prefill)と出力の生成(decode)で使うアクティブパラメータを分けています。この分離により、prefillが8B、decodeが16Bという規模になります。
記事では、この構成の全体に対する疎度(実際に計算に使うパラメータの割合)が1〜2%になると説明されています。疎な構造で総パラメータを大きくしつつ、推論時に動かす計算量を抑える狙いだとみられます。
さらにSliding-Window Attention Bounded Replayという工夫を組み合わせ、KVキャッシュ(生成済みトークンの内部状態を保持するメモリ)の使用量をV4 Flash比で最大8分の1に抑えたとされています。長時間動き続けるエージェント用途では、より速く安く動く可能性があります。
ベンチマークと価格の位置づけ
独立系の評価アカウントArtificial Analysisによると、v4.1-FlashはArtificial Analysis Intelligence Indexで40点を記録しました。これはGLM-5.3-Flashのすぐ下、直近のV4 Pro 0813より上の位置づけです。価格は入力100万トークンあたり$0.30、出力100万トークンあたり$1.20、キャッシュ済み入力は$0.006で、オフピーク時にはさらに50%の割引が適用されるとされています。
ValsはVals IndexでKimi K3を上回り、オープンウェイトモデルの1位になったと報告しています。テスト1回あたりのコストは$0.30で、オープンウェイト上位10モデルの中では最も安いとされます。評価は1Mコンテキスト、最大出力384トークン、temperature 1、既定のtop-p/top-k、high reasoning effortという条件で行われたと記載されています。
一方、記事の筆者は、公開されているベンチマークの数字だけを見るとv4.1-Flashが他のオープンモデルに劣る部分もあるとしつつ、それは今回の設計意図を簡潔に測れる指標がまだ無いためだと述べています。
画像入力と技術者の見方
画像入力にも対応していますが、技術者からの評価では抜本的な変更ではないという見方が出ています。バックボーンに視覚トークンを渡す方式で、ピクセルの分割には一般的な2x2ではなく3x3のunshuffleを採用していると指摘されています。Kimi K3とは視覚エンコーダが大きく異なるというコメントもありました。
アーキテクチャ全体については、Stochastic ChasmがHySparseやNSA、DeepSeek自身のV4におけるCSA/HCAと設計思想を比較し、局所的なスライディングウィンドウ経路とスパース検索経路を組み合わせた構成だと整理しています。
別の技術者は「研究面では非常に保守的で時に古いアイデアと、エンジニアリング面では最先端になり得る効率・ハードウェア設計が混ざっている」と評しました。層数の削減や複数の圧縮周波数を使う設計についても言及があり、KVキャッシュ圧縮を重視した結果として高効率なモデルになったという見方も示されています。
まだ分かっていないこと
記事の時点で、v4.1-Flashの実運用での性能を測る標準的なベンチマークは不足しています。筆者は、コンテキストの使い方の創造性や効率を測る指標がまだ無いと指摘しており、公開されている数字だけで優劣を判断するのは難しい状況です。
日本国内からの利用可否については、原文に米国でのAPI提供が可能である旨の記載はありますが、日本向けの提供条件や地域制限の詳細は示されていません。オープンウェイトで公開されているため自社環境での実行という選択肢はありますが、その場合の要件も今回の記事だけでは分かりません。
学習の詳細についても、ポストトレーニングに関する見解がProf Jie Tang氏とおおむね一致するという言及があるものの、具体的な内容は記事からは読み取れません。技術レポートの詳細を確認する必要があります。
| 項目 | prefill(入力) | decode(出力) |
|---|---|---|
| アクティブパラメータ数 | 8B | 16B |
| 担当する処理 | 入力トークンの処理 | 出力トークンの生成 |
what we are HUGE fans of is the prefill/decode separation introduced here, 8B in prefill (input tokens), 16B in decode (output tokens)
私たちが非常に高く評価しているのは、ここで導入されたprefill / decodeの分離です。prefill(入力トークン)に8B、decode(出力トークン)に16Bを使います。
今後の見通し
v4.1-Flashの真価は、公開されているベンチマークの点数だけでは測りにくいと筆者は指摘しています。今後、長文コンテキストやエージェント用途での実測値、たとえばKVキャッシュ削減の効果やレイテンシ、実際のコストが第三者の検証で出てくれば、実務での採用判断がしやすくなるとみられます。また、GLM-5.3-FlashやKimi K3といった他のオープンウェイトモデルとの比較がどう更新されるかも注目点です。日本からのAPI提供条件や日本語での性能が明らかになれば、国内企業にとっての実用性を判断できるでしょう。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
長文を扱うエージェント型アプリケーションでは、推論コストの大半をKVキャッシュのメモリと入出力トークンの処理が占めます。v4.1-Flashは入力と出力で使うパラメータを分離し、KVキャッシュをV4 Flash比で最大8分の1に抑える設計を採っており、同じGPU資源でより長いコンテキストを扱える可能性があります。オープンウェイトかつMITライセンスで提供されるため、自社環境でのホスティングを検討する際の選択肢にもなります。一方、日本語での性能や日本からのAPIアクセス条件は今回の記事では示されておらず、導入判断には追加の検証が必要です。prefillとdecodeを分ける設計自体は、推論基盤のメモリ配分やバッチ設計を考えるうえでの参考にもなります。
気になる点
- 日本からもAPIを利用できますか
- 原文には米国でのAPI提供が可能である旨と、Basetenが「US-only」で対応した旨の記載があります。日本を含む他地域からの利用可否や条件については、この記事の時点では公表されていません。
- 利用料金はどのくらいですか
- 入力が100万トークンあたり$0.30、出力が$1.20、キャッシュ済み入力が$0.006です。さらにオフピーク時には50%の追加割引があるとされています。Valsの評価ではテスト1回あたり$0.30で、オープンウェイト上位10モデルの中で最も安いと報告されています。
- 既存のV4 Proからの移行は必要ですか
- 記事ではV4 Pro 0813が退役し、新しいアーキテクチャのモデルへ全面移行するとされています。ただしAPIの互換性や移行手順、既存アプリケーションへの影響については原文に記載がなく、現時点では判断できません。
用語解説
- MoE(Mixture of Experts)
- 複数の専門家ネットワークのうち一部だけを計算に使う設計。総パラメータを増やしつつ、推論時の計算量を抑えられる。
- prefill / decode
- prefillは入力トークンをまとめて処理する段階、decodeは出力トークンを1つずつ生成する段階。処理の性質が異なるため分離して設計することがある。
- KVキャッシュ
- 生成済みトークンの内部状態(キーとバリュー)を保持するメモリ。長いコンテキストでは使用量が増え、推論の速度やコストに影響する。
- オープンウェイト
- 学習済みの重み(パラメータ)が公開されているモデル。ライセンス条件の範囲で自社環境での実行や改変が可能な場合がある。
- 疎度(sparsity)
- 総パラメータのうち、実際の計算で使われるパラメータの割合。v4.1-Flashでは1〜2%と説明されている。
出典
[AINews] DeepSeek v4.1-Flash: 763B-P8B-D16B novel causal Encoder–Decoder architecture with vision marks the Return of the Whale
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