
- Metaの消費者向けAIエージェントMuseは米国で1日60万人が利用し、App Store上位に入った。
- Museはファイル名や定義文言がOpenClawと酷似すると指摘され、Metaは「ゼロから作った」と否定した。
- OpenClawはスキルの15%に悪意ある指示があったとの分析があり、安全性が課題として残る。
MuseとOpenClawの酷似
Metaが投入した消費者向けAIエージェント「Muse」について、公開直後からOpenClawとの類似を指摘する声が出ている。両者は人格や口調を定義するファイル名(SOUL.md、memory、toolsなど)が共通し、設計も似ているとされる。あるRedditユーザーは「MuseはOpenClawの上に作られたラッパーアプリにすぎない」と主張し、OpenClawが抱えるセキュリティ上のリスクも引き継いでいると述べている。
これに対しMetaは否定的だ。Superintelligence Labsのプロダクト責任者Nat Friedman氏はXで、Museを「ゼロから」作ったと説明する一方、製品としてはOpenClawから「強く触発された」と認めている。同氏は1月にOpenClawを初めて使い、チームのために数百台のMac Miniを購入したと述べた。ファイル名や文言を引き継いだのは、開発者のSteinberger氏がそれらを「まさに正しい」ものにしたとチームが考えたためだと説明している。
OpenClawが開いた流れ
OpenClawはPeter Steinberger氏が週末の一人プロジェクトとして作り、利用者の個人コンピュータ上で動く。WhatsApp、Telegram、Slack、Teams、Discordといった普段使うメッセージアプリで、人と話すようにAIエージェントと対話できる点が特徴だ。約1週間で200万訪問とGitHubの10万スターを集め、24時間稼働のためにMac Miniを買う人や、エージェント同士が「会話」するSNSを作る人、世界各地でオフラインミートアップを開く人が現れた。
記事によれば、主要AI企業は以前からエージェント分野に大きく賭けていたが、OpenClawほど普及が突破した製品はなかった。2月にOpenAIがSteinberger氏を雇い、5月にGoogleが年次イベントで消費者向けエージェントを発表、6月にAppleがエージェントに全面注力、8月にInstinctが非公開ベータで急成長して数億ドルを調達、9月にMetaがMuseを発表した。記事は、これらが少なくとも部分的にはOpenClawに触発されたと評している。
新しさは普及のしやすさ
記事が両製品の最も重要な進化と見るのは、技術的な新規性よりもAIエージェントを広く使えるようにした点だ。MuseはMetaの各種システムと連携でき、ワンタップで導入できるため、OpenClawにあった導入の手間を大きく減らしている。InstinctはAppleの標準メッセージアプリからエージェントと会話できる点で、利用者の裾野を広げた。どちらも専用のローカル端末で使うこともできるが、それは既定の選択肢ではないとされる。
利用例も日常的なものだ。あるInstinctユーザーは、保険適用の医師受診の書類記入、サブスクリプションの解約、独身男性向けパーティーの幹事、休暇中のアクティビティ予約、DMV(車両管理局)の予約、未払いの通行料金の支払いなどをエージェントに任せたと投稿している。別のユーザーは、カナダのホテルに置き忘れた物品の回収を任せたという。価格面では、少なくとも現時点でGoogleの「Spark」など競合製品より安価だと記事は述べている。
残るセキュリティの課題
OpenClawの弱点として記事が挙げるのはセキュリティだ。最も多くダウンロードされたスキルの一つにマルウェアが含まれ、ある研究者の分析ではスキルリポジトリの15%に、ユーザーデータへの隠れたアクセスなどを行う「悪意ある指示」が含まれていたという。これに対しZuckerberg氏はMuseについて「プライバシーとセキュリティのために一から作られた」とし、データと認証情報は「ブラウザ、CPU、メモリ、ストレージを備えた分離されたLinuxコンピュータ」であるMuse Secure VMに保存されると説明している。
ただし、現時点でMuseの安全性が主張どおりに改善しているとは限らない。ユーザーのデータは他ユーザーから分離されているものの、Meta自身はアクセスできる。Metaは今年後半に「VM内のデータにMetaがアクセスすることを暗号学的かつ検証可能に防ぐ」方法を導入する予定だとしている。またMuseは、ユーザーデータをモデル改善に使う設定が既定で有効になっている(オプトアウトは可能)。さらに今週、研究者がXで指摘したゼロデイ脆弱性により、単純な攻撃でエージェントを乗っ取り完全に制御できるとされる。Instinctも利用規約が広範すぎるとの批判を受けたが、その後調整されたようだと記事は伝えている。
| 項目 | Muse | OpenClaw | Instinct |
|---|---|---|---|
| 提供主体 | Meta | Peter Steinberger氏の個人プロジェクト | 評価額25億ドルで資金調達中とされる |
| 主な利用環境 | Metaのシステムと連携、ワンタップで導入 | 利用者のPC上で動作し、WhatsAppやSlackなどで対話 | Appleの標準メッセージアプリ経由で対話 |
| 主な実績 | 米国で1日60万人が利用(Apptopia推計) | 約1週間で200万訪問、GitHubで10万スター | 非公開ベータで急成長し数億ドルを調達 |
| セキュリティ面の指摘 | Muse Secure VMで分離するがMetaはアクセス可能、ゼロデイ脆弱性の指摘 | スキルリポジトリの15%に悪意ある指示との分析 | 利用規約が広範との批判(その後調整とみられる) |
Nat Friedman, head of product for Meta's Superintelligence Labs wrote on X that Meta built Muse “from scratch.” He did, however, acknowledge Muse is “heavily inspired as a product” by OpenClaw.
MetaのSuperintelligence Labsのプロダクト責任者であるNat Friedman氏は、XにMuseを「ゼロから」作ったと投稿した。ただし同氏は、MuseがOpenClawから「製品として強く触発された」ことも認めている。
今後の見通し
Metaは今年後半に、VM内データへのMetaのアクセスを暗号学的に防ぐ仕組みを導入する予定としている。これが実際に実装されれば、プライバシー面の評価は変わる可能性があるが、時期や技術的な詳細は現時点で公表されていない。今週指摘されたゼロデイ脆弱性がどの程度速く修正されるか、Museが米国以外でいつ提供されるかも明らかになっていない。日本のIT企業にとっては、こうしたエージェントを業務に使う際のデータ管理と権限設計が判断材料になるとみられる。各社がセキュリティ対策の実装状況をどこまで公開するかが次の焦点になる。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
日本のIT企業・開発者にとって、この一件は「AIエージェントを誰がどう提供するか」が実務の選択肢に直結する話だ。OpenClawは利用者のPC上で動き、WhatsAppやSlackなどのメッセージツールから操作できる点で普及した。同様の体験をMetaやInstinctがマネージド(運営側が管理する)サービスとして提供すれば、導入の手間は減る一方、データは事業者の管理下に置かれる。MuseではMetaがデータにアクセスできる状態が続き、モデル改善への利用も既定で有効になっている。利便性とデータ主権のトレードオフをどう設計するかが、社内ツールへの組み込みを検討する際の主要な論点になる。セルフホスト可能なオープンソース系エージェントとの使い分けを、セキュリティ要件とセットで整理しておく価値がある。
気になる点
- MuseはOpenClawのコードをそのまま使っているのですか。
- MetaはMuseを「ゼロから」作ったと説明しており、コードの流用は認めていない。一方でSuperintelligence LabsのNat Friedman氏は、製品としてOpenClawから「強く触発された」と述べ、ファイル名や人格定義の文言を引き継いだ理由も説明している。両者のコードが同一かどうかを裏付ける公開情報は、現時点では確認できない。
- MuseやInstinctは日本から使えますか。料金はいくらですか。
- 原文が触れているのは米国の利用状況(Museの1日60万人、Apptopia推計)で、対応国や日本での提供予定、具体的な料金は示されていない。Googleの「Spark」など競合製品より安価だとする記述はあるが、金額の記載はない。日本での提供可否は現時点では公表されていない。
- セキュリティはOpenClawより改善しているのですか。
- OpenClawではスキルリポジトリの15%に悪意ある指示が含まれていたとの分析がある。MuseはデータをMuse Secure VMに分離するが、Meta自身はアクセス可能で、暗号学的に防ぐ仕組みは今年後半に導入予定とされている。さらにゼロデイ脆弱性の指摘もあり、現時点で改善が十分とは言えない状況とみられる。
用語解説
- AIエージェント
- 利用者に代わって予約や書類記入などの作業を実行するAI。メッセージアプリ経由で指示できる製品が増えている。
- ゼロデイ脆弱性
- 修正プログラムが提供される前に悪用されうるセキュリティ上の欠陥。攻撃手法が先に知られる点で危険度が高い。
- VM(仮想マシン)
- 物理マシン上に分離して作られる仮想的なコンピュータ環境。Museではエージェントの実行基盤として使われる。
- スキル
- AIエージェントに追加機能を与える拡張。OpenClawでは外部から配布され、悪意あるものも混入しうる。
- DAU
- 1日あたりの利用者数。製品の普及度を測る指標として使われる。
出典
Muse sure looks a lot like OpenClaw
https://theverge.com/report/1000180/muse-openclaw-instinct-lookalike
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