
- EpicがLauncherの新Preview版を公開、AIを使いゼロから書き直したと説明
- 起動速度でSteamを上回ると主張、Arsの検証でもコールドスタートが数秒速い
- 機能は従来版より少なく、ソーシャル機能などは未移植でバグも残る見込み
何が公開されたのか
Epic Gamesは2026年10月14日、Epic Games Launcherの新しい「Preview」ビルドを公開した。Steamに対抗するGame Storeを始めてからほぼ8年となるタイミングで、Epicは起動速度を武器にした刷新に踏み切った。Epicは発表文で「programming is hard. So, instead of doing that, we vibe coded a new Epic Games Launcher...」と説明しており、冗談めかした表現ながらAIを使ってコードを書いたことを明確にしている。
Epic Games Storeのゼネラルマネージャー兼バイスプレジデントを務めるMartin Keely氏はPC Gamerに対し、チームは「ゼロから始めた」と述べた。AIは「新しい機能や能力を、以前とは異なる技術スタックで根本から書き、レビューするためのツール」として使ったという。目標は現行ランチャーにある機能を再現することで、コードそのものを引き継ぐことではなかったとしている。
技術的に何が新しいのか
Keely氏はIGNに対し、AIを使ってコードを書いたことで「効率が上がり、小さなチームでコードベースを書き直して、各プラットフォームへより速く投入できるようになった」と説明している。対応OSはWindowsとMacで、加えてLinux版も用意する予定だという。小規模なチームで複数プラットフォーム向けのクライアントを作り直す、という進め方自体が今回の特徴といえる。
今回のPreviewは、6月のUnreal Festで発表された「storefront rearchitecture」と「Launcher V2 private Beta」の一般公開版という位置づけになる。当時Epicは新ランチャーで「5x faster cold start」を実現すると説明していた。機能面ではRecent Gamesリストや、ネットワーク通信を一元管理するダウンロードハブなど、以前から要望の多かったものが追加されている。
ただしEpic自身がPreviewは「light on features」だと認めている。FAQでは「一部のソーシャル機能とアカウント管理オプション」が旧バージョンからまだ移植されていないと説明されており、新旧ランチャーの「feature parity(機能の同等性)」に向けて作業中とされている。
速度の主張と検証結果
EpicはSNSでも「we vibe coded the Epic Games Launcher to be faster than the other guy(あの相手より速くなるようにバイブコーディングした)」と繰り返し強調している。Ars Technicaの検証では、ログインや更新の問題がない前提で、新ランチャーはコールドスタートからストアページ表示までSteamより数秒速かった。
一方、システムトレイからライブラリ画面へ復帰する速度については、Steamより0.06秒速いと主張されている。ただしこの差は小さすぎて気づけない程度だとArsは指摘しており、検証でも同様だったという。起動速度の優位は、体感できる部分と体感できない部分が混在している。
バイブコーディングの文脈と注意点
「バイブコーディング」という言葉には、急いで組み上げた粗いコードが重大な誤りを表面下に隠してしまう、という否定的な含意が依然としてある。Epic自身もPreviewにはバグがあると警告し、フィードバックフォームで早期テスターからの報告を募っている。機能不足も認めており、品質面の評価は今後のアップデートを待つ必要がある。
この発表の数日前には、BloombergがEpicがStar WarsとMarvelをテーマにしたシューターに向けて「AI first」の開発モデルへ転換していると報じた。Tim Sweeney CEOはSNSで「ここには大きな転換が進行中だ。開発者を動かしてAIによる加速を最大化するための再編だ」と述べている。同氏は「少ない人数で同じことをするのが目的ではなく、ここにいる全員がより多く、より良いものを作れるようにするためだ」とも説明した。ランチャーの刷新は、この方針の一環とみられる。
| 項目 | 新Previewランチャー | 従来版・Steam側の記載 |
|---|---|---|
| コールドスタート | Steamより数秒速い(Ars検証) | 6月の発表では新ランチャーが「5x faster cold start」と説明 |
| トレイからの復帰 | Steamより0.06秒速いと主張 | 差は体感できない程度とArsが指摘 |
| 実装方針 | AIを使いゼロから書き直し、異なる技術スタック | 機能のみ再現し、コード自体は引き継がない |
| 機能の範囲 | Recent Games、ダウンロードハブを追加 | 一部のソーシャル機能・アカウント管理は未移植 |
programming is hard. So, instead of doing that, we vibe coded a new Epic Games Launcher that’s way faster and more responsive than the current one, and has a new look.
プログラミングは大変だ。だから、そうする代わりに私たちはバイブコーディングで新しいEpic Games Launcherを作った。現行版よりずっと速く、応答性が高く、見た目も新しくなっている。
今後の見通し
次に注目されるのは、新ランチャーが旧版とのfeature parityにいつ到達するかである。Epicは「作業中」としているが、時期は明示していない。Keely氏が言及したLinux版の提供時期や配布方法も現時点では公表されておらず、今後のPreview更新で明らかになるとみられる。また、Arsの検証はコールドスタートとトレイ復帰に限られており、ゲームのダウンロードや更新、ライブラリ表示など他の操作で優位が維持されるかは分かっていない。バグ報告の推移と機能追加のペースを追うことで、バイブコーディングによる書き直しが実運用に耐えるかを見極められる。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
日本のIT企業にとってこの事例が示すのは、AIによるコード生成が「新規の小規模プロトタイプ」だけでなく、既存製品のクライアントを複数OS向けに書き直す場面でも使われ始めたという点です。小さなチームでWindows・Mac・Linuxを並行して支えるという説明は、クライアントアプリの保守コストに悩む国内企業にも参考になります。一方でEpic自身が機能不足とバグを認めており、AI生成コードをそのまま出荷するのではなく、レビューと段階的な公開を前提にしていることが読み取れます。ゲーム業界ではUnreal Engineを使うスタジオが多く、Epicが「AI first」へ舵を切る方針は、将来的なツール提供やワークフローにも影響し得ます。導入を検討する際は、生成コードのレビュー体制と、機能の同等性をどう検証するかを先に決めておくことが重要になりそうです。
気になる点
- 「バイブコーディング」とは何ですか。
- Epicは、AIを使ってコードを書いたりレビューしたりする進め方を指してこの言葉を使っています。原文に明確な定義はありませんが、新ランチャーは「ゼロから」書き直したと説明されています。一般にはAIが生成したコードをそのまま取り込む開発スタイルを指すことが多く、品質管理の難しさが論点になりやすい手法です。
- 新しいランチャーは試せますか。従来の機能はそのまま使えますか。
- Previewビルドは公開されており、Epicのアカウントがあれば試せる立場にあります。ただしEpic自身が「機能は少ない」と認めており、一部のソーシャル機能とアカウント管理オプションはまだ移植されていません。バグも残る見込みで、Epicはフィードバックフォームで報告を求めています。業務や常用環境での切り替えは、機能の同等性が確認されてからが無難です。
- Linux版はいつ出ますか。
- Keely氏はIGNに対し、WindowsとMacに加えてLinux版も用意する予定だと述べています。ただし具体的な時期や配布方法は原文では公表されていません。今後のPreview更新やEpicの発表で明らかになるとみられます。現時点で判断材料になるのはこの発言のみです。
用語解説
- バイブコーディング
- AIにコードを書かせる形で進める開発スタイル。Epicは新ランチャーの書き直しに使ったと説明している。
- ランチャー
- ゲームやアプリの起動・更新・配信を行う専用ソフト。ここではEpic Gamesのクライアントを指す。
- コールドスタート
- アプリを起動してから実際に操作できるようになるまでの一連の処理。キャッシュの無い状態からの起動を指す。
- 技術スタック
- アプリを作るために組み合わせるプログラミング言語、フレームワーク、ライブラリなどの構成。
- feature parity
- 新旧のバージョンや他製品の間で、機能が同等に揃っている状態。Epicはこれを目標に作業中としている。
- システムトレイ
- OS画面上で常駐アプリのアイコンを表示する領域。ここからウィンドウを復帰させる速度が比較されている。
出典
Epic says its new vibe-coded Epic Games Launcher is faster than Steam
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