
- Nemotron 3.5 Super VLなど言語モデル群と、構造化データ向けKumoを新たに公開
- Cosmos 3.5でロボット・自動運転向けの学習データ作成とシミュレーション評価を強化
- BioNeMoのタンパク質設計モデルと量子向けIsingも提供開始、用途が4分野に拡大
発表されたモデル群
NVIDIAは、言語・ロボティクス・生物学・量子コンピューティングの各分野にまたがるオープンモデルの品揃えを広げると発表しました。新しいNemotron 3.5 Super VLとNemotron 3.5 Bolt、検索や文書処理向けのNemotron Retriever、構造化データ向けのKumo、ワールドモデルのCosmos 3.5、自動運転向けAlpamayo 2 Edge、創薬向けBioNeMo、量子向けIsingが含まれます。同社は、組織が自社データでカスタマイズし、自分たちが管理するインフラ上に配備できる点を狙いとして挙げています。
モデル群の背景には、特定の地域や産業に合わせたAIを作りたいという需要があります。NVIDIAは、Nemotronが欧州のパートナーであるBlack Forest Labs、H-Company、Mistralを含む「NVIDIA Nemotron Coalition」のデータや研究、知見をもとに構築されていると説明しています。原題には欧州の「ソブリンインテリジェンス(主権的知能)」という表現があり、自国・自社のデータと管理下のインフラを重視する動きを意識した構成とみられます。
NemotronとKumoの役割
Nemotronは、エージェントを構築する開発者向けに、オープンな言語モデルとデータセット、レシピを提供します。テキストと画像を扱えるため、エージェントがワークフローを整理し、複雑な問題を推論し、専門タスクをより低いコストでこなすことを助けるとしています。Dassault Systèmes、Domyn、Dream、Palantirの顧客、Salesforce、SAP、Shopify、Synopsys、WPP、さらにAccentureやEYといった企業が、Nemotronのモデルとデータセットを使ったカスタムモデルや業務特化エージェントの構築に取り組んでいるとされています。
もう一つの柱がKumoです。Kumoは、構造化されたビジネスデータから結果の予測、不正リスクのスコアリング、行動の推薦を行うためのオープンな基盤モデルとライブラリ群で、NVIDIA Agent Knowledge Foundationの一部に位置づけられています。タスクごとに個別の機械学習パイプラインを組む手間とコストを減らし、予測までの時間を短縮するのが狙いです。Kumo Structuredは関係データや表形式データの予測・異常検知を担い、Kumo Engineは構造化データ向け基盤モデルを開発・配備するためのオープンなライブラリスタックと説明されています。
導入企業としてCognite、Coinbase、Databricks、DoorDash、Revolut、Tubiの名前が挙がっています。Snowflakeの顧客も、広告やエネルギー、金融サービス、小売などの分野でKumoモデルを使い始めているとされています。
ロボティクスと自動運転
ロボティクスと自動運転では、Cosmosが物理世界を理解し相互作用するロボットや自動運転車、視覚エージェントの開発を支えます。新たに、より少ない計算量でワールドモデルを改善するポストトレーニングと最適化のツール、実機テスト前に運転やロボット操作の振る舞いを評価するシミュレーションチェックポイントが追加されます。
Cosmos Data Factoryは、運転シーンや製品欠陥、画像拡張、イベント生成のための学習データを整理・ラベリング・生成・評価するためのブループリントとエージェントスキルで構成されます。PorscheとVoxel51、ANYboticsとEncord、ZalandoとCEVA LogisticsとSereact、Siemensがこれを使っているとされています。
自動運転向けのAlpamayo 2 Edgeは、車載向けの小型推論モデルです。Cosmos 3 EdgeのNemotronベースの基盤の上に構築され、NVIDIA DRIVE AGX Thor向けに最適化されており、より低い計算要件で高度な運転機能を車両に載せることを助けるとしています。
創薬と量子への広がり
生命科学では、ワシントン大学タンパク質設計研究所のBaker Labとの共同開発によるBioNeMo RFD4-Proteinaが公開されます。タンパク質の配列と3次元構造を生成し、難しい標的に結合するタンパク質や複合体を組み立てるタンパク質、低分子に結合するタンパク質の設計を支援します。200アミノ酸のタンパク質を使ったベンチマークでは、RFdiffusion3より約13倍速く設計を生成し、10以上のタンパク質設計タスクで高い性能を示したとしています。
量子分野のIsingは、さまざまな量子ビット方式にまたがり、リアルタイムのハードウェア校正から誤り訂正までを支える共通基盤を提供します。IQM Quantum Computersはプロセッサの校正にIsingを使い、汎用の大規模モデルより専用のオープン校正モデルが優れることを示したとしています。SEEQCはNVQLinkとIsingを自社のDigital Linkと組み合わせ、リアルタイムの量子誤り訂正に必要な低遅延を満たそうとしています。AWSはIsingをAWS Parallel Computing Service(AWS PCS)に統合し、研究者が利用しやすくするとしています。
提供形態と未公表の点
Nemotron 3.5 Super VLはHugging Face、ModelScope、OpenRouter、build.nvidia.comでNVIDIA NIMマイクロサービスとして提供され、クラウドやポストトレーニング、推論の各パートナー経由でも利用できます。Nemotron 3.5 Bolt E4B 4GBは10月23日金曜日に提供予定とされています。KumoはHugging Faceとbuild.nvidia.com、CosmosはHugging FaceとGitHub、IsingはGitHubとHugging Face、build.nvidia.comで公開されます。Alpamayo 2 Edgeは今月中にGitHubとHugging Faceでダウンロード可能になる予定です。
一方、原文には各モデルのライセンス条件や商用利用の可否、日本語を含む対応言語の詳細、具体的な価格は記載されていません。Nemotronについて「より低いコスト」という表現はありますが、数値の裏付けは示されていません。導入を検討する際は、公開先ごとの条件を個別に確認する必要がありそうです。
| モデル | 主な用途 | 主な提供場所 |
|---|---|---|
| Nemotron 3.5 Super VL | テキストと画像を扱うエージェント向け言語モデル | Hugging Face、ModelScope、OpenRouter、build.nvidia.com |
| Nemotron Retriever | 埋め込み・再ランキング・文書解析 | Hugging Face、パートナープラットフォーム、build.nvidia.com |
| Kumo | 構造化ビジネスデータの予測・異常検知 | Hugging Face、build.nvidia.com(NIM) |
| Cosmos | ロボット・自動運転向けワールドモデル | Hugging Face、GitHub、一部の推論パートナー |
| Ising | 量子ハードウェアの校正・誤り訂正 | GitHub、Hugging Face、build.nvidia.com |
The open models give organizations a foundation they can customize with local data and deploy on infrastructure they control.
これらのオープンモデルは、組織が自社データでカスタマイズし、自分たちが管理するインフラ上に配備できる基盤を提供します。
今後の見通し
今回の発表はモデルの提供開始が中心で、実運用での精度やコストを示すデータは限られています。今後は、各モデルのライセンス条件や日本語を含む多言語での性能、ポストトレーニングにかかる計算資源が明らかになるかが判断材料になるとみられます。KumoやIsingのように業務データや専用ハードウェアと結びつく分野では、導入企業の事例が積み上がるかどうかが普及の鍵になりそうです。Nemotron 3.5 Boltの提供開始後に、実際の推論コストが共有されるかも注目点になります。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
日本企業にとっては、モデルの重みが公開され、自社データで追加学習し、自社のインフラに置ける点が実務上の意味を持ちます。機密性の高いデータを外部に出せない金融・製造・医療といった領域では、クラウドAPIに依存しない選択肢になります。自動車産業ではAlpamayo 2 EdgeがNVIDIA DRIVE AGX Thor向けに最適化されている点が、車載開発の検討材料になり得ます。Kumoのように表形式の業務データを直接扱うモデルは、需要予測や与信・不正検知といった基幹系業務に近い用途と相性がよく、既存の機械学習パイプラインを置き換える検討につながるとみられます。一方、日本語での性能やライセンス条件、実際の運用コストは原文に示されておらず、導入判断には追加の検証が必要です。
気になる点
- 日本企業でもこれらのモデルを自社システムに組み込めますか
- 各モデルはHugging FaceやGitHub、build.nvidia.comで公開され、NIMマイクロサービスとしても提供されます。ただし原文には地域制限やライセンス条件、商用利用の可否が明記されていません。導入前に公開先ごとの条件を確認する必要があります。
- 利用に費用はかかりますか
- 原文には価格や課金体系の記載はありません。Nemotronについて「より低いコスト」という表現があるものの、具体的な金額は示されていません。NIMマイクロサービスやクラウドパートナー経由の提供形態が案内されているため、実際の費用は各提供元で確認することになります。
- 自社データや日本語データで追加学習できますか
- 原文は、Nemotronが企業自身の知識に基づくアプリケーションを作る土台になるとし、AfterQueryやScale AIなど多数のポストトレーニングパートナーを挙げています。自社データでのカスタマイズは想定されていますが、日本語での性能や対応言語の詳細は示されていません。
用語解説
- オープンウェイトモデル
- 学習済みの重みが公開され、自社環境で実行したり追加学習したりできるモデル。学習データやコードの公開範囲は個別に異なります。
- NIM マイクロサービス
- NVIDIAが提供する、モデルを最適化してコンテナ形式で配備できる推論用パッケージ。build.nvidia.comなどから利用できます。
- ワールドモデル
- 物理世界の動きや環境を予測・生成するモデル。ロボットや自動運転の学習データ生成や挙動評価に使われます。
- ポストトレーニング
- 事前学習済みモデルを、自社データや特定タスク向けに追加学習して調整する工程。ファインチューニングを含む広い概念です。
- 構造化データ
- データベースの表のように、行と列で整理されたデータ。文章や画像のような非構造化データと対比されます。
- 量子誤り訂正
- 量子ビットの計算で生じる誤りを検出・修正する技術。実用的な量子コンピュータには低遅延の処理が求められます。
出典
NVIDIA Open Models Advance Europe’s Sovereign Intelligence Across Industries
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