
- Flintは40Bパラメータのうち2.5Bだけを使うMoE構成で、ノートPCでの動作を可能にした
- M4 Pro搭載MacBook Proで毎秒約131トークン。同マシンの類似モデルの約2倍と同社は主張
- Eureka Machineが開発のほぼ全工程を支援し、小規模チームが4ヶ月未満で構築したという
無料・ローカル動作のモデル
Recursiveは10月21日、同社として最初のモデルとなる「Flint」を公開した。無料のコーディングモデルで、クラウドではなく利用者自身のノートPC上で動作する。Hugging FaceからApache 2.0ライセンスの下でダウンロードでき、無料利用と改変が認められている。
ローカルで動くため、オフラインでの利用、コードを外部に送らずに済むこと、処理したテキスト量に応じたクラウド型AIサービスの利用料を避けられることが利点として挙げられている。
Recursiveは昨年設立された企業で、5月にステルス状態を解除した。GV、Nvidia、AMD Venturesなどを含む投資家から6億5000万ドルの資金を調達し、評価額は46億5000万ドル。CEOはSalesforceの元チーフサイエンティストであるRichard Socher氏が務める。
40Bのうち2.5Bだけを使う設計
FlintはMixture-of-Experts(MoE、複数の専門家のうち必要な部分だけを使う方式)を採用する。40Bのパラメータのうち、タスクごとに実際に使うのは2.5Bのみで、これがノートPCで扱える軽さにつながっている。
同じくオープンなモデルであるMetaのMuse Spark Openは816Bパラメータを持ち、少なくとも1テラバイトのメモリを必要とする。Flintはこれと比べてはるかに小さい。
速度面では、AppleのM4 Proチップを搭載したMacBook Proで毎秒約131トークンを生成した。同社のテストでは、同じマシンで動かしたGoogleのGemma 4やNvidiaのNemotron 3.5 Lightningなど類似モデルの毎秒58〜69トークンに対し、約2倍になる。NvidiaのRTX Spark上では毎秒150トークンを超えたという。
ベンチマークでは、実際のソフトウェアのバグ修正能力を測るSWE-Bench Verifiedで、50B未満のパラメータを持つモデルの中で最も高い性能を示したとしている。同社が独自に行った6種類のテストの平均では、AlibabaのQwen3.8 27BのみがFlintを上回った。
Eureka Machineの関与
Recursiveは、自社の自動研究システム「Eureka Machine」がFlintの開発のほぼすべての段階を支援したと説明する。その結果、小規模なチームが4ヶ月未満でゼロからモデルを構築できたという。
同社によれば、Eureka Machineの貢献には、より疎なモデル形状の採用、品質をほとんど落とさずにモデルを71%縮小した低ビット学習、計算を高速化する専用プログラム(custom kernels)が含まれる。
ただし、Eureka Machineによって研究者の時間がどれだけ短縮されたかは公表されていない。AIに研究を担わせる動きは他社にも広がっており、OpenAIは8月中旬の時点で、AIエージェントが研究者1人の作業に対して3.1作業日分を記録したと述べている。
Recursiveは6月にAmazon Web Servicesと4億1000万ドルの計算資源に関する契約を結んだとされ、TechCrunchに対して「人数よりもエージェント数」だと説明していた。
評価と現時点の注意点
同社は、Flintが大規模な有料コーディングアシスタントに比べてより多くの指示を必要とすると認めており、大きなタスクを小さな手順に分けるよう助言している。
初期のレビューは好意的だと伝えられている。WiredのWill Knight氏は48GBのメモリを積んだMacでFlintを使い、ToDoリストアプリやWeb上の情報を調べるツールなど複数の小規模プログラムを作成した。ClaudeやCodexと比べると小型のコーディングモデルは誤りや遅さに直面しがちだが、Flintは自分の要望に毎回応えたとしている。
再帰的自己改善は、AIがより良いAIを作り、それがさらに良いAIを作るという考え方で、業界で最も議論の多いテーマの一つである。AIが自らを改善することで人間の制御を外れる可能性を懸念する研究者もいる。現時点のRecursiveの取り組みは、人間が監督するAI研究アシスタントという範囲にとどまる。
Socher氏はWiredに対し、長期的な目標はEureka Machineが完全な再帰的自己改善を達成することだと語った。人間が監視し、問題が起きれば停止できる形を想定しているという。第三者が独立に検証した結果や、日本語を含む多言語での性能については、原文に記載がない。
| 項目 | Flint | Muse Spark Open |
|---|---|---|
| 総パラメータ数 | 40B | 816B |
| 1タスクで使うパラメータ数 | 2.5B | 原文に記載なし |
| 必要メモリ | 原文に明示なし | 少なくとも1テラバイト |
| 想定する動作環境 | ノートPC | Mac向け |
If Recursive’s bet pays off, each new model should be able to take on longer stretches of work without human help.
もしRecursiveの賭けが実を結べば、新しいモデルはそれぞれ、人間の助けなしにより長い作業を担えるようになるはずだ。
今後の見通し
Recursiveの狙いは、Eureka Machineが次のモデルをより速く作れるようにし、各世代で人間の助けを必要とする作業の範囲を広げていくことにある。ただし現時点で示されたのは、あくまで人間が監督する研究アシスタントが小型モデルを作ったという一事例であり、自己改善がどこまで進んだかを測る指標は示されていない。今後、Eureka Machineが実際に研究時間をどれだけ削減したのか、また第三者がFlintの性能や安全性を再現・検証できるかが明らかになれば、実力の判断材料になる。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
ソースコードを外部クラウドに送れない企業にとって、ローカルで完結するコーディングモデルは現実的な選択肢になり得る。金融・製造・公共系など、情報持ち出しの制約が強い開発現場では、オフライン動作とApache 2.0ライセンスの組み合わせは導入検討のハードルを下げる。一方、同社自身が認めるように指示の出し方に工夫が必要で、既存のクラウド型アシスタントをそのまま置き換えられるわけではない。まずは小規模なタスクやコード補完で試し、日本語での精度やセキュリティ要件を自社で確認する進め方が現実的とみられる。また、AIが研究開発自体を加速させる流れは、モデル開発のコスト構造や人員計画に影響し得る。
気になる点
- 日本でも無料で使えるのか
- Hugging FaceでApache 2.0ライセンスの下に公開されており、無料でダウンロードして改変もできるため、日本からも利用可能と考えられる。ただし、日本語でのコーディング性能や動作に必要なメモリの公式な条件は原文に記載がない。
- 既存のクラウド型コーディングアシスタントから移行できるか
- 同社はFlintが大規模な有料アシスタントより多くの指示を必要とすると認めており、大きなタスクを小さく分けることを勧めている。単純な置き換えではなく、タスクの分割や指示の書き方を見直す前提での併用が現実的だ。
- どのくらいのスペックのPCが必要か
- 原文ではM4 Pro搭載のMacBook Proで毎秒約131トークン、NvidiaのRTX Sparkで毎秒150トークン超という測定結果が示されている。Wiredの記者は48GBメモリのMacで利用したが、公式な最低要件は原文に記載がない。
用語解説
- MoE(Mixture-of-Experts)
- 複数の専門家サブネットワークを用意し、入力に応じて一部だけを使うモデル方式。計算量を抑えつつ総パラメータ数を増やせる。
- パラメータ
- モデルが学習で調整する数値のことで、モデルの規模を示す指標。一般に多いほど表現力が高いが、必要な計算資源も増える。
- SWE-Bench Verified
- 実際のソフトウェアの不具合をAIが修正できるかを測るベンチマーク。実務に近いコーディング能力の比較に使われる。
- トークン
- モデルが扱うテキストの最小単位。生成速度は毎秒あたりのトークン数で表され、多いほど応答が速い。
- Apache 2.0ライセンス
- 無料での利用・改変・再配布を認めるオープンソースライセンス。特許に関する条項を含む点が特徴。
- 再帰的自己改善
- AIがより優れたAIを設計し、それがさらに次のAIを作るという考え方。制御を失うリスクを指摘する声もある。
出典
Recursive launches Flint, a laptop coding model it says was largely built by AI
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