
- 検索クエリは5年ぶりの高い伸びだが、検索売上の伸びは前四半期の約17%から12%に減速した
- AI Modeのクエリは従来検索より収益化率が低く、Googleは広告実験を拡大中だが時期は未公表
- 広告主はAI広告の在庫を個別に計測できず、AI検索広告の収益貢献は依然として不明
決算で示された減速
Googleを傘下に持つアルファベットが先週発表した2026年第3四半期の決算で、Google検索の売上高は前年同期比12%増となり、前四半期の約17%増から伸びが鈍りました。検索クエリ自体は5年ぶりの高い伸びを示しています。しかし、収益を生む広告クリックである「有料クリック」の伸びは13%から8%へ鈍化しました。
成長率は依然として2桁ですが、投資家が期待した方向ではありません。アルファベットは今年、主にAIを支えるために約2000億ドルのインフラ投資を計画しています。決算発表後に同社株は約14%下落し、AIへの投資コストとリターンに対する疑問が表れました。
AI検索広告の現在地
最高商務責任者(CBO)のフィリップ・シンドラー氏は、売上成長の鈍化について、為替の影響が最大の要因であり、業種によって異なる広告主の支出変化もあったと説明しました。加えて、AI Mode経由のクエリは力強く伸びているものの、従来の検索より低い収益化率にとどまっていることも影響したと述べています。同氏は「広告実験は有望な結果を示している」としています。
Googleは、検索結果に生成AIの要約を添えるAI Overviewsと、検索を対話形式にするAI Modeの両方で広告を拡大しています。海外展開に加え、米国ではAI Modeの複数ターンの会話にも配信を広げています。単体アプリ「Gemini」への広告導入も選択肢として言及しましたが、時期は公表していません。
シンドラー氏によれば、AI Modeのクエリの多くは既存の検索を置き換えるものではなく「追加的(incremental)」な質問です。購入前の情報収集にあたる「アッパーファネル」も多いといい、同社はこれらを広告販売の機会と位置づけています。
広告主から見た不透明さ
広告代理店Tinuitiのリサーチ担当バイスプレジデント、アンディ・テイラー氏によると、同社の同一店舗ベースの広告主は第3四半期にGoogle有料検索への支出を前年比14%増やし、ROAS(広告費用対効果)の目標も維持しました。同氏は「成果は落ちていない」と話しています。
ただし広告主は、AI広告の在庫を個別にターゲティングしたり、成果を切り出して確認したりできません。全体の成果が安定しているのが、AI広告の流量がまだ小さく影響が見えないためなのか、既存の在庫と同程度の成果だからなのかは区別がつかない状況です。テイラー氏は前者の可能性が高いとみています。
外部の研究もあります。10月のワーキングペーパー(査読前の作業論文)は、米国でChatGPT広告経由の訪問が小売店にもたらした売上は1セッションあたり0.89ドルで、Google検索広告経由の2.45ドルより64%少なかったと報告しました。これは小売側の売上を測ったもので、Google自身のAI広告の性能を示すものではありません。テイラー氏は、検索意図の違いが影響している可能性を指摘しています。
残る不確実性
この減速が、Googleが説明するような段階的な広告展開の結果なのか、AI検索における広告のより根本的な問題なのかは、現時点では判別できません。
eMarketerでAIと広告を担当する主席アナリストのネイト・エリオット氏は、これはGoogleの基幹事業が数十年ぶりに向き合う最初の大きな混乱だと評しています。同氏は、検索エンジンがバナー広告からリスティング広告へ移行するまでに時間がかかったことや、ソーシャルメディアが試行錯誤を重ねたことを挙げ、有効な広告フォーマットの確立には数年かかりうると注意を促しています。
テイラー氏は、Googleがモバイルへの移行を成功させたことを引き合いに、既存事業の余力が時間的な猶予を与えていると見ています。一方で、AIへの投資規模が大きくなっていることがリスクを高めていると記事は指摘しています。
| 指標 | 第2四半期 | 第3四半期 |
|---|---|---|
| 検索売上高の前年比成長率 | 約17% | 12% |
| 有料クリック数の伸び | 13% | 8% |
“They absolutely do not have it all figured out,” Elliott says. “No one has it all figured out.”
「彼らは完全に解明できているわけではまったくない。誰も解明しきれてはいない」とエリオット氏は言う。
今後の見通し
GoogleはAI検索の広告を海外や会話の複数ターンへ広げており、単体のGeminiアプリへの広告導入も選択肢として残しています。ただし時期は公表されておらず、AI Modeのクエリがどれだけ収益性の高い既存検索を置き換えているかも明らかになっていません。次の四半期以降、検索売上と有料クリックの伸び率が持ち直すかどうか、また広告主がAI広告の在庫を個別に計測できるようになるかが判断材料になるとみられます。過去のモバイル移行と同様に、新しい広告フォーマットが定着するまで数年かかる可能性もあります。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
日本企業の多くは、Google検索からの自然流入と検索連動型広告の両方に集客を依存しています。AI OverviewsやAI Modeが広がれば、検索結果から自社サイトへのクリックが減る一方、AIの回答内で自社情報が引用されるかどうかが認知獲得を左右しうるためです。コンテンツ制作や構造化データ、商品情報の整備といったSEO実務は、AIが引用しやすい形で情報を提供する方向へ重心を移す可能性があります。広告出稿の側では、AI面の在庫が個別計測できない状態が続けば、予算配分の判断根拠が弱くなります。日本の開発者にとっては、検索流入を前提とした集客設計を見直すかどうかを検討する材料になります。ただし国内でのAI広告の提供時期や仕様は原文で示されておらず、影響度は今後の発表次第とみられます。
気になる点
- AI検索の広告は日本でも出稿できるのか
- GoogleはAI OverviewsとAI Modeの広告を国際的に拡大していると説明していますが、原文では日本を含む具体的な国や開始時期は示されていません。国内での提供時期は現時点では公表されていないとみられます。
- AI検索広告の成果は個別に測れるのか
- 現時点では測れません。Tinuitiのテイラー氏によれば、GoogleはAI広告の在庫を個別にターゲティングさせたり、パフォーマンスを切り出して示したりしていません。そのためAI広告だけの費用対効果は把握できない状態です。
- 検索売上の伸び鈍化は広告主が出稿を控える理由になるのか
- 記事の範囲では、広告主の支出は増えており、ROASの目標も維持されています。Googleは鈍化の最大要因を為替と業種別の支出変化と説明しました。ただしAI広告の効果が既存と同等かどうかは検証されていません。
用語解説
- AI Overviews
- 検索結果の上部に生成AIの要約を表示するGoogleの機能。記事では広告の掲載先として拡大中とされています。
- AI Mode
- 検索を対話形式で進められるGoogleの機能。記事では従来の検索より収益化率が低いとされています。
- 有料クリック
- 広告がクリックされて収益が発生する行為。Googleの検索広告収入の動向を示す指標として使われます。
- ROAS
- 広告費用に対する売上の比率。Return on Ad Spendの略で、広告の費用対効果を測る指標です。
- アッパーファネル
- 購買プロセスの上流段階のこと。まだ買う商品を決めていない情報収集の段階を指します。
- ワーキングペーパー
- 査読を受ける前の研究成果を公開する論文形式。内容が後から修正されることがあります。
出典
Google hasn’t figured out how to make AI pay like its search engine
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