
- ERCOTの接続待ちは474GW、うち9割がデータセンター
- 自家発電の案件は停止対象外、環境監査の抜け道も
- バージニアやニューヨークでも規制の動きが広がる
系統接続の一時停止
アボット知事は8月3日、ERCOTと公益事業委員会に対し、系統接続を進めている全データセンター案件の包括的な検証と監査を指示した。理由は、記録的な電力需要の伸びが州の送電網の信頼性を損なう恐れがあるためだ。これにより新規の系統接続は少なくとも当面認められない。
ERCOTはテキサス州の大部分に電力を供給する独立系統運用機関で、米国の他地域とは分離された送電網を抱える。州はこれまで安価な土地と豊富なエネルギー資源、税制優遇を武器にデータセンターを誘致してきた。その結果、最大市場のバージニア州を追い抜く勢いにある。
接続待ちは474GW超
現在ERCOTの接続待ちリストには1,800以上の案件があり、合計で474ギガワットを超える電力供給の申し込みが登録されている。これはテキサス州の過去最大のピーク電力需要の5倍以上で、うち約9割がデータセンターからの申し込みだ。すべてが実際に建設されるわけではないが、ERCOTは2032年までに電力需要が現在の記録を2倍にする可能性があると予測している。
州政府は2014年からデータセンター向けの税制優遇を続けており、現在は年間10億ドル以上に膨らんでいる。テキサス・トリビューンによると、今後2年間で32億ドルの売上税収入が失われる見込みという。こうしたコストと便益のバランスも監査の対象となる。
監査は水利用と地域影響
アボット知事の指示には、各データセンターがERCOT系統にどれだけ依存するか、年間・ピーク時の消費電力量、州の財政支援への依存度、所有構造などの報告が含まれる。さらに冷却システムや水使用が地域の水資源に与える影響も調べるよう求めている。ただし研究者のショーレイ・レン氏が指摘するように、データセンターは冷却の直接使用よりも発電過程で大量の水を使うことが多く、この点は指示に含まれない。
シエラクラブの報告では、2024年にテキサス州の天然ガス発電所が560億ガロン、石炭発電所が340億ガロン、原子力発電所が260億ガロンの水を使用。一方、データセンターが冷却に直接使った水は80億ガロンだった。また、騒音や照明、敷地後退、交通対策など地域住民への影響の軽減策も監査対象だが、大気汚染や温室効果ガス排出は言及されていない。
自家発電は対象外に
今回の一時停止は、自前の発電設備を持つデータセンターには適用されない。電力を自給する「ビハインド・ザ・メーター」方式は、メタ、マイクロソフト、アマゾン、オラクル、オープンAIなどが採用しており、天然ガス依存が一般的だ。クリーンビューの調査によると、テキサス州はビハインド・ザ・メーター容量で全米最多の40ギガワットを公表している。
ただし、ガスタービンの受注残が長引く中、データセンター事業者は「トレーラーに載せた移動式ガス発電機」や「航空機・軍艦向けに開発された航空派生型タービン」などの代替手段に頼りつつある。州の規制環境が緩く、パーミアン盆地のガス供給とパイプライン網が整っていることが背景にある。
全米に広がる規制
テキサス州の停止措置は、ERCOTが進めてきた「Batch Zero」と呼ばれる案件群の系統接続プロセスも延期させた。アボット知事はかつてテキサスを「AI開発の中心地」と宣言したが、データセンターや超高圧送電線に対する住民の反発が強まり、支持率が低下しているとみられる。FOXニュースの世論調査では、民主党のジーナ・イノホサ候補が知事に1ポイント差まで迫っている。
バージニア州やニューヨーク州でも同様の動きがあり、ニューヨークのキャシー・ホークル知事は7月14日、データセンター建設を1年間禁止すると発表した。米国ではデータセンターによる環境影響や電気料金の上昇を懸念する声が強まっており、電力インフラを巡る政策転換が続きそうだ。
That unprecedented load growth could endanger the reliability and stability of the Texas electric grid.
この前例のない負荷増大は、テキサス州の電力網の信頼性と安定性を損なう可能性がある。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
日本のIT企業・開発者にとって、データセンターの立地戦略と電力調達の重要性が改めて浮き彫りになった。米国進出を検討する企業は、テキサス州に限らず各州の規制動向を注視する必要がある。特に、系統接続の停止は新規案件の着工遅延につながるため、自家発電や電力購入契約(PPA)など電源確保の手段を多様化する必要があるだろう。また、環境監査の対象となる水使用や地域影響への対応は、日本国内のデータセンター計画にも同様の視点が求められる可能性がある。
用語解説
- ERCOT
- テキサス州の電力系統を運用する独立系統運用機関(ISO)。米国本土から分離された送電網を管理する。
- 系統接続
- データセンターなどを電力網に接続すること。接続待ちの案件が多ければ電力需給の逼迫リスクが高まる。
- ビハインド・ザ・メーター
- 電力網を介さず、データセンター敷地内で発電する方式。天然ガス発電が主流。
- Batch Zero
- ERCOTの系統接続を効率化するためのグループ化プロセス。初回グループの通知が延期された。
- 航空派生型タービン
- 航空機エンジンを改良した発電用タービン。ガスタービンの代替として注目されている。
出典
Texas halts data center connections to power grid amid overwhelming demand
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