
- cuFile API群をオープンソース化しGPUとストレージの直接連携を標準化
- Storage-Nextに40超のベンダーが参加しAIストレージの標準化を推進
- SCADAで安全な高速直接アクセスを実現しAI処理の効率化へ
FMSでAIストレージの新技術発表
2026年8月4日から6日までアメリカ・サンタクララで開催されるFuture of Memory and Storage(FMS)カンファレンスで、NVIDIAがAI向けストレージの新しい取り組みを発表します。AIエージェントが大量のデータを消費し、GPUがストレージへ直接アクセスするようになると、数千単位の同時操作が発生すると説明しています。これに伴い、データの暗号化や圧縮、検証、再構成といった処理がストレージシステムのボトルネックになる、というのが問題提起です。
NVIDIAの技術ブログが示すベンチマークでは、NVIDIA Vera CPUがx86 CPUと比べて、圧縮と暗号化の2段階パイプラインで最大3.21倍のスループットを実現したとしています。Veraを採用したストレージ基盤は、少ないコンピューティングリソースでAIデータの流入を吸収できると同社は見ています。この技術は「NVIDIA Vera BlueField-4 STX」の一部として位置づけられています。
cuFileのオープンソース化とは
FMSでNVIDIAは、cuFileアプリケーションプログラミングインターフェース(API)と、その下にある垂直ソフトウェアスタックをオープンソース化すると発表しました。cuFileはGPUDirect Storageのオープンソースコンポーネントであり、GPUがCPUを介さずにストレージへ直接読み書きできるようにする技術です。数十万のGPUスレッドと高速な高帯域幅メモリを活用し、ストレージからのデータアクセスをマイクロ秒単位で実現することを目指します。
この取り組みは、Linuxのベストプラクティスに基づくセキュリティ重視のストレージスタックを業界全体で統一し、GPUとデータの相互運用性を確保する狙いがあります。オープンコードのAPI拠点には、Google、Intel、NVIDIA、Metaが初期メンテナーとして参加し、各ソフトウェア・ハードウェアプラットフォーム向けに最適化できるようになります。これにより、AI活用の企業や開発者はセキュリティコンテキストとデータストレージへ、より高速にアクセスできる可能性があります。
Storage-NextとSCADAの狙い
NVIDIAは、ストレージ業界のリーダー企業とともに、AIストレージの新たな標準化を目指す「Storage-Next」イニシアチブを進めています。この取り組みには40以上のストレージおよびフラッシュベンダーが参加し、DDN、KIOXIA、Micronなどが名を連ねます。ストレージメーカーやコントローラベンダー、冷却技術、オーケストレーション事業者、標準化団体が連携し、GPU駆動のストレージの動作を定義してオープンな業界標準に転換します。
Storage-Nextの基盤となるのが、SCADA(スケールド・アクセラレーテッド・データアクセス)と呼ばれるフレームワークです。SCADAは、超並列GPUがアプリケーションに必要なデータだけをストレージから直接、自身の高速メモリに取り込むことを可能にします。例えばDDNは、自社のAIネイティブなデータ基盤「Infinia」にSCADAを統合し、スケールでのストレージボトルネック解消を図ります。
セキュリティ設計と今後の論点
高速な直接アクセスは、設計を誤ると他のプロセスのメモリ領域を上書きするなどのセキュリティリスクを伴います。SCADAはこの問題に対して、ユーザーアプリケーションのうち高速処理が必要な部分を信頼済みコンピューティングベース(TCB)の外に置き、別の特権コンポーネントがアクセスを保護する方式をとります。セットアップ時にユーザーアプリと承認済みストレージの間の保護付きアクセスを設定し、Linuxの標準的なセキュリティプロトコルに従ってデータを保護します。
これに加えてNVIDIAは、CMX Context Memory Storageを提供しています。これはNVIDIA STX基盤の上で、長いコンテキストや多ターンのエージェント型AI推論に向けたAIネイティブなコンテキスト階層を提供するものです。ただし、SCADAの具体的な実装詳細や各ベンダーとの協業の進み具合については、今後の情報が待たれる状況です。FMSは8月4日から6日まで開催され、NVIDIAは関連セッションを予定しています。
AI success will be defined not by how much infrastructure organizations own, but by how productively they use it.
AIの成功は、組織がどれだけのインフラを所有するかではなく、どれだけ生産的に活用するかで決まる。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
日本のIT企業や開発者にとって、cuFileのオープンソース化は、GPUを活用した自社システムのストレージ接続を従来のCPU経由ではなく直接的に設計できる可能性を示します。特に大規模なAI推論やデータ解析を行う企業は、SCADAやStorage-Nextの動向を踏まえ、ストレージ選定やシステム構成の見直しを検討する価値があります。さらに、Linux標準のセキュリティ設計に基づくこれらの技術は、NVIDIAだけでなく複数ベンダーの製品に広がる可能性が高いため、今後の互換性や運用サポートへの影響を注視する必要があります。
用語解説
- cuFile
- NVIDIA GPUDirect Storageを構成するオープンソースのAPI群。GPUがCPUを介さずにストレージへ直接読み書きできるようになる。
- GPUDirect Storage
- GPUとストレージ間でデータを直接転送するためのNVIDIAの技術。CPUの介在を減らし、データ転送を高速化する。
- SCADA
- スケールド・アクセラレーテッド・データアクセスの略。GPUが必要なデータだけをストレージから直接高速メモリに取り込むためのフレームワーク。
- Storage-Next
- NVIDIA主導で進められるAI向けストレージの標準化イニシアチブ。40以上のベンダーが参加している。
- FMS
- Future of Memory and Storageの略。メモリとストレージに関する業界カンファレンス。
出典
As AI Increases Demands on Memory, Storage Steps Up
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