
- シリーズFで39億ドルを調達し、企業価値は309億ドルに上昇
- 資金はアビリーンの大型拠点と、輸送可能な小型AI工場「Spark」に充当
- 10カ月前の前回調達は13.8億ドル・企業価値100億ドルだった
39億ドル調達と新取締役
Crusoeは2026年9月17日、シリーズFラウンドで39億ドルを調達したと発表しました。企業価値(バリュエーション)は309億ドルに達します。ラウンドはAtreides Management、Mubadala Capital、Valor Equity Partnersの3社が共同で主導し、Founders Fund、GIC、Nvidia、カタール投資庁(QIA)、Radical Ventures、TPGも参加したとしています。
同社は2018年設立の8年目の企業です。当初はフレアガスを電源とする暗号資産マイニング事業として出発し、計算需要の急増を受けてAIインフラへ軸足を移しました。顧客にはMeta、Microsoft、Oracleが含まれるとされています。取締役にはCloudflare CFOのThomas Seifert氏、Primary Digital Infrastructureのパートナー兼CIOのBill Stein氏、Redwood Materials創業者兼CEOのJB Straubel氏が新たに加わります。Straubel氏は2021年に個人としてCrusoeに出資しており、Crusoeは後にRedwoodの蓄電池事業の最初の顧客になったということです。
小型AI工場「Spark」
調達資金は既存のデータセンター計画の資金に充てられます。テキサス州アビリーンにある、OpenAIが利用する大規模サイトなどが対象です。加えて、トラックで輸送でき、大きな電源があればほぼどこでも接続できる小型の「モジュラー型AIファクトリー」にも充てられます。
このモジュラー型データセンターは「Spark」と呼ばれ、自社工場で製造されます。大規模な建設作業員を必要とせず、短期間で計算能力を配備できる点が特徴です。さらに、巨大な複合施設に反対する地域住民の反発という、データセンター開発者が直面する課題を、少なくとも部分的には回避できる可能性があるとされています。同社の共同創業者兼CEOは声明で、AIは豊かさの時代をもたらすと信じているとし、それには「電子からトークンまでインフラを制御すること」が必要だと述べています。
3つの収益源と大型契約
Crusoeの収益は3つの柱からなります。自前のGPUを持ち込む顧客にデータセンターのスペースを貸す、自社のGPUを貸し出す、AIモデルの実行(推論)に使う計算能力を販売する、の3つです。この組み合わせが、同社をAIインフラ企業の中でも特に企業価値の高い存在にしていると原文は説明しています。
Bloombergによると、Crusoeは定量取引会社Jane Streetに対し、GPUとAIインフラを5年間供給する130億ドルのクラウド契約を結びました。またAxiosは先月、同社がGoldman SachsやMorgan Stanleyを含む投資銀行と、近い将来のIPOについて協議したと報じています。今回の調達は、2025年10月に13.8億ドルを調達して企業価値100億ドルをつけてから10カ月後の出来事です。
現時点で不明な点
調達額、企業価値、投資家構成、新取締役は公表されていますが、資金の配分比率やSparkの具体的な仕様、製造台数、設置先は明らかにされていません。IPOについても協議が報じられているだけで、実施時期や実施の可否は示されていません。
モジュラー型の拠点が地域コミュニティの反発をどの程度実際に緩和できるかも、現時点では不明です。データセンターに必要な電力の調達方法や、フレアガス由来の電源構成が今後どう変わるかについても、原文では触れられていません。
| 項目 | 2025年10月(前回) | 2026年9月(今回) |
|---|---|---|
| 調達額 | 13.8億ドル | 39億ドル |
| 企業価値 | 100億ドル | 309億ドル |
controlling the infrastructure from electrons to tokens, and we’re grateful to have investors who share that conviction.
電子からトークンに至るまでインフラを制御することであり、こうした信念を共有してくれる投資家がいることに感謝しています。
今後の見通し
今回の調達で、Crusoeはアビリーンの大型拠点の整備とSparkの量産を進める資金を得たことになります。今後、Sparkの具体的な仕様や出荷台数、設置先が明らかになれば、モジュラー型というアプローチがデータセンターの立地制約や地域住民の反発をどこまで緩和できるかを判断できるでしょう。Axiosが報じたIPOについては、投資銀行との協議がどこまで進むのか、正式な申請や時期の公表が次の判断材料になるとみられます。Jane Streetとの130億ドル契約のような大型受注が続くかどうかも、収益の安定性を見るうえで注目されます。
日本の開発者・IT企業にとっての意味
日本のIT企業・開発者にとって、AI向け計算資源の調達先と価格に影響しうる動きです。GPUを自前で持ち込みたい企業や、推論用の計算能力を外部調達したい企業にとって、Crusoeのような「スペース貸し+GPU貸し+推論販売」を組み合わせた事業者は、クラウド大手以外の選択肢になり得ます。またSparkのようなトラック輸送可能なモジュラー型データセンターは、大規模な建設用地や送電網の確保が難しい地域でも計算基盤を置ける可能性を示しており、国内のデータセンター立地を検討する際の参考になる考え方です。ただし、Crusoeが日本国内でサービスを提供するか、日本語での契約やサポートが可能かは原文に記述がなく、現時点で日本企業が直接利用できるかは分かりません。39億ドルという調達規模は、AIインフラ投資が引き続き拡大していることを示す指標としても読めます。
気になる点
- 「Spark」とはどのようなものですか。
- 自社工場で製造する小型のモジュラー型データセンターです。トラックで輸送でき、大きな電源があればほぼどこでも接続できるとされています。大規模な建設作業員を必要とせず短期間で計算能力を配備できる点が特徴で、巨大施設に反対する地域住民の反発を部分的に回避できる可能性も指摘されています。具体的な仕様や設置台数は公表されていません。
- Crusoeはどうやって収益を上げていますか。
- 3つの柱があります。自前のGPUを持ち込む顧客にデータセンターのスペースを貸す、自社のGPUを貸し出す、AIモデルの実行(推論)に使う計算能力を販売する、の3つです。Bloombergによると、定量取引会社Jane Streetと、GPUとAIインフラを5年間供給する130億ドルのクラウド契約も結んでいます。
- 日本企業はCrusoeのサービスを利用できますか。
- 原文では顧客としてMeta、Microsoft、Oracleの名前が挙がっており、日本企業向けの提供や日本国内での拠点計画については触れられていません。日本から利用できるのか、料金がいくらなのかは現時点で公表されていないため、続報を待つ必要があります。
用語解説
- シリーズFラウンド
- スタートアップの資金調達ラウンドの一つ。A、B…と続くアルファベットの6番目で、比較的後期の段階にあたる。
- バリュエーション
- 企業価値。投資家が算出する企業のおおよその価値で、調達額とともに発表されることが多い。
- 推論(inference)
- 学習済みのAIモデルにデータを入力して結果を得る処理。学習に比べ継続的に計算資源を消費する。
- フレアガス
- 石油採掘の際に副次的に発生し、燃やされる天然ガス。Crusoeは創業時のマイニング電源に使っていた。
- モジュラー型データセンター
- 工場で製造し、輸送して設置できる分割構造のデータセンター。大規模な建設工事を減らせる。
出典
Crusoe raises $3.9B to build massive data centers and small modular “AI factories”
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